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「降谷さん!?」
「…くくっ、あははは、」
「…今の女性は、」
「ああ、気にするな。事件とは関係ない。」
「そ、そうですか…。」
「今から佐々木が降りてくる。現行犯逮捕しろ。」
「ハッ。」

下で待ち受けていた部下が俺を心配するも、俺は可笑しくて笑いが止まらなかった。まさかあそこでビンタが飛んでくるとは思わなかったし、あいつが俺のことを忘れないでいてくれたことが嬉しかった。

話せば話すほど、彼女への想いが募って仕方ない。今なら何も隠すことなく付き合うことだってできるのに、直ぐに降谷だと言えなかったのはきっと彼女が俺のことを必死に忘れようとしているから。

忘れさせてたまるか。それなら安室透としてでもいい、俺のことをまた新たにインプットさせてやる。

「佐々木、お前を拉致監禁の疑いで現行犯逮捕する。」
「な!?お前ら一体どうやって、」
「これは返してもらおうか。」
「あ、それは辻川さんの、」
「お前の口からその名を呼ぶな。穢れる。」
「っ…お前、」
「後は頼んだぞ。」
「はい。」

俺は佐々木から荷物を奪い、彼女が走っていった方向にゆっくりと歩きだした。バックをよく見ると財布も携帯も全て入っていた。みのりは一体どこで何をしているんだ、と辺りを見渡すと公園に一つの影が見えた。

ゆっくりと近づけば、その影は間違いなく彼女で。その後ろ姿はあの頃よりも一回り小さく感じた。あの頃はもう少し丸かった気がする。性格も、体格も。今はまるで抱き締めたら折れてしまいそうなくらいに細い。

「こんなところで何してるんですか。」

振りかえった彼女の目には涙が溢れていた。ああ、泣き顔は数年たっても変わらないんだな。怒れば直ぐ泣く、そういうところも何も変わらない。

「何で、いるんですか。」
「いたらダメですか?」
「…また、殴られたいんですか?」
「それは勘弁して頂きたいですね。」
「じゃあ帰ってください。」
「荷物を届けに来たのに?」
「…荷物は置いてってください。」
「何か言うことは?」
「…あ、りがとうございます。」


もうダメだ、俺はこのまま彼女を返せない。


自分勝手だと分かっている。自分から彼女を手放したのに俺はまたこの手を取ろうとしている。

目に映る彼女は危うくて、今ここで彼女と別れたら本当に今後会えなくなるかもしれない。そう思うと自然と彼女の腕を引き腰に腕を回した。逃げられないように強く、彼女を抱き締めた。

「やめてください、」
「…やめません。」
「安室さ、んっ」
「あなたをこのまま1人にさせたくない。」
「っ……、」
「お願いですから、どうでもいい男になんて抱かれないでください。」
「…あなたには、関係な」
「関係を作らせてください、…何でもいい、あなたと関係がほしい。」
「……どうして、そんな、」



その答えは、まだ言えない。

俺はそれ以上の彼女の言葉を聞きたくなくて、聞けなくて。俺は黙って彼女を抱き締めた。