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もう待つことに疲れた。

何度か連絡を入れたけど連絡も取れず、また安室さんと会えずに1ヶ月悶々としていた。そんな中、両親が勝手にセッティングしたお見合いに騙されて行くと想像していたよりかなりいい方で、この人と一緒になってしまった方が自分にとって幸せなんじゃないかなと思うようになってしまって。でもその前にゆらゆらとしていた淡い気持ちをはっきりと伝えて終わりにしよう。そう思って連絡をしたわけだけど、まさか連絡が付いたその日に会えるとは思っていなかった。

安室さんには家まで何度か送ってもらっていたけど、家の中に入ってもらうのは初めてだった。インターフォンが鳴り、扉を開くといつもより焦った様子が伺える安室さんの姿があった。

「あ、おはようございます。」
「…ええ。上がっても?」
「はい。」
「お邪魔します。」

私はキッチンへと足早に移動し、飲み物を入れる。そのままダイニングテーブルがあるイスに座ってもらい、私はお茶を差し出した。

「久しぶり、ですね。」
「…ええ。すみません、仕事が忙しくて全然連絡も取れなくて。」
「いいんです。私の方こそ何度か連絡をしてしまってごめんなさい。」
「…それで、先ほど言っていた電話の件ですが、」
「ああ、お見合いですか?いや〜びっくりしちゃいましたよ。両親が勝手にセッティングしたもので。」
「…へえ。」
「でもさすが両親が選んできた人なのか、すごくいい方で。優しくて、危険のきの字もなくてこの人といたらきっといい将来を歩けるんだろうなって直感で思いました。」
「……。」
「だから、ね。安室さん。…私は、過去をちゃんと過去にして、貴方を安室さんといういい友人としてこれからお付き合いできたらいいなと思ったんです。」
「……。」
「あ、最後ってなんだか紛らわしかったですよね。すみませ、」
「俺はもういらないと言うことか。」

冷たい声が、部屋に響いた。安室さんを見ると、明らかにいつものいい人オーラは消えていて、どちらかというと私が良く知る人の方に似ていた。

「いらない、というか…。」
「お前は好きでもない男と結婚して幸せなのか?」
「……別に、今はそうじゃなくても彼とだったらこれから、」
「嘘だ。」
「…安室さんに何がわかるって言うんですか。」
「俺は、」
「今更あの人みたいな感じださないでよ!」

私は思わず立ち上がった。その様子を見てびっくりしたのか、安室さんは目を見開いていた。

「…自分勝手、すぎるよ。」
「……。」
「私、もう待つの疲れちゃった。」
「……。」

何か言いたげなことは分かっていた。でも私はそれから目を反らし、言葉を続けた。

「せめて自分が本当は誰なのか、自分で言ってよ。どうせあんたのことだから、一度酷い別れ方をして罪悪感でいっぱいで本当のあんたとして私の前にいるのが申し訳なさでいっぱいだったんでしょ?」
「……。」
「別に、…忘れようとしてたし。ていうか本当にあんたと再会する前までは好きとか、そういう思いも全然もう無くて。…無かったのに、急に現れるんだもん。そんなの、…そんなの、好きになっちゃうじゃん。」
「っ、みのり、」
「だけどもう、さすがにこの年だし、これ以上振り回されるのは嫌だなって思って。…あはは、情けないんだけどこの1ヶ月、結構仕事でもいろいろあって、お見合い進めてきたお母さんが倒れちゃって…結構しんどかった。そんな時に、あなたはいてくれなかった。」
「……。」
「だからもう、」
「悪かった。」

ずっと黙っていた彼が口を開いたかと思ったらそれは謝罪の言葉で。予想とは反した反応に私は固まってしまった。

そして目の前にいる彼は、もう名前を呼んでしまいたい彼だった。