無事(?)先日の視察を終え、今日もこのむさ苦しいデスクで処理対応だ。チラッと降谷さんのデスクを見るとそこに姿はなく、恐らくポアロでエセ優しいお兄ちゃんを演じているんだろう。アカデミー俳優:降谷零だ。
そういえば前回のワンピースだけど、もちろん降谷さんがお金を出して買っていかれたので、お返しするようにクリーニングに出してきたんだけど今日はお渡しできそうにないな。まあ、降谷さんの手にあっても困るかもしれないけど、彼女がいるならその子に着てもらえばいい。
そもそもあの人、彼女とかいるのかな。聞いたことも、そういう話になったこともないから分からない。…けどあの顔だし、彼女の1人や2人、いてもおかしくないか。
「風見さんは結婚してないんでしたっけ?」
「…なんだ藪から棒に。」
「いや、純粋な疑問です。」
「していないよ。…大切なものを作ると失ったときの大きさは計り知れないしな、お互いに。」
「…でも明るい家庭に帰りたいって気持ちになりません?」
「何だ、辻川は結婚願望があるのか?」
「あ、いやそういうわけではないんですけど。」
「お前今年いくつになったんだっけ?」
「…27です。」
「入りたての頃はまだ24とかだったのにな〜!」
「はええな〜あっという間に30代だぞ〜。」
「先輩たちうっさいっすわ。てかわざわざ斜め後ろから話題に入ってこないでくれます?」
皆で雑談をしながら仕事だなんて平和なもんだ。世の中平和が1番だ。しかしおっさんたちはこの手の話が好きみたいで、何度も脳内で女子か!って突っ込んでいた。
「いや〜でも辻川が結婚式とかしたら俺泣いちゃうな〜。」
「いやいや気持ち悪いですよ。」
「こんなこと言っても俺たちにとって娘みたいなもんだもんなあ。」
「む、娘って…先輩たちまだそんなに年取ってないでしょ…。」
「40代にもなるとな、20代の小娘なんて中学生みたいなもんなんだよ。」
「ひどいな!」
「お前、愛されてるな。」
「風見さんやめて。こんなおっさんたちに好かれても私嬉しくないから。」
「とか言って耳赤くなってるのが本当に可愛いよなあ。」
「わかるわかる。」
「ちょお!やめてください!!赤面症なの!!」
慣れない先輩たちからのデレに私は顔を仰ぎ後ろに向けてた椅子を前に戻す。もう喋らないで仕事してやる。
「でも降谷さんもまだギリ20代だけど、あの人も結婚いつだろうな…。」
「いや〜降谷さんは結婚するのか?」
「風見、何か聞いたことあるか?」
お?少し気になっていた降谷さんの恋愛事情。右腕ともいえる風見さんはそう言う話もしているのか、私も興味深々だ。
「いえ、特には。」
「そうか〜あ、でもこの間理事官が見合いさせたいからって写真持ってきてたぞ。」
「まじで?まーそうだよなあ、結婚したとしても政略結婚かー。」
「あんな女選び放題!みたいな顔してるのにもったいないよな〜。」
「本当ですよねえ…。」
「辻川は降谷さんのことどう思う?」
その先輩の一言に私以上に風見さんがガタガタと反応していたのはほっといて、おっさんたちの色話になぜ混ざらないといけないのか嫌になってきた。
「そういえば降谷さん、辻川のことかなり可愛がってるよな。」
「そんなことないですよ。」
「この間ハグしたのはさすがに初めてじゃないか?」
「相当お疲れだったんだろうな。」
「も、もうほんと忘れて…。私だってびっくりですよ全く。」
「でもまんざらでもないだろ?あんな綺麗な人がくっついてくれるのわ。」
「綺麗って山路さん降谷さんのことそんな風に思ってったんですか!」
「え、まじですか先輩。」
「そうじゃねえよ!ただ世間一般的にだな…。」
「で?辻川、降谷さんのことどう思ってるんだ。」
「ちょ、風見さんまでこの話に参戦するのやめてくださいよ…。」
「みんな気になってんだよ。なあ?」
周りの人が一斉にうんうん、と首を縦に振ってきた。もう本当に恥ずかしいからやめてほしい。
「み、みんなと一緒ですよ!尊敬できる上司、信頼できる上司!それだけです!」
「えーつまんなー。」
「つまんないってなんすか!」
「結構お似合いだと思うけどなあ、降谷さんと辻川。」
「やめてやめて、やめてくださいまじで。あんな人の横にいるとか私風見さんくらいごつくならないと無理。」
「別に俺のポジションになれということではないだろ…。」
「とにかく先輩方が期待するような関係にはならないですからね!」
私は立ち上がりお手洗いへと逃げた。
まさかこの話を降谷さんが盗聴器越しに聞いていたことは風見さん以外誰も知るまい。