風邪を引いたら上司がきた
えぐい風邪を引きました。
「すみませ、んっ」
『こっちは大丈夫だからちゃんと病院へ行けよ。』
「は、はい、」
『もし動けないほどだというならそっちへ行くが大丈夫か?』
「平気で、す…すみません、風見さん…。」
『安静にしてちゃんと休養しろ。また夜にでも連絡する。』
「はいぃ。」
熱を測ってみたら39.2という高熱の上、声もかさかさで食べたものは全て吐いてしまう。飲み物を冷蔵庫に取りに行くのさえ一苦労だ。とてもじゃないけど病院に行けるほどの余力はない。だけどこんな自分の管理もできずになってしまった風邪のせいで風見さんの迷惑になるなんてことできなかった。
私はとにかく飲み物を飲んで、昔に買ってあった市販の風薬を飲みベッドに寝転んだ。もうダメだ、意識も朦朧とする。こんな時に、家族が近くにいればなあ。あ、何だろうセンチメンタル。
両親は私が警察官になることは反対だった。当たり前だよね、一人娘だもん。それでも自分の我儘を突き通して数年。裏切るように家を出てきてしまったため、もう両親とは全然連絡を取っていない。まあ詳しく言えば父。母とはたまに連絡が入るけど、父とは大学を卒業してから連絡も取っていなかった。
会いたいなあ。元気にしてるかな。風邪を引くと精神的にもくるのかあ。私は零れる涙を止められず、ごしごしと目を擦った。そのまま気が付けば意識を失っていた。
「ん…あ、れ?」
「起きたか。」
「…ふる、やさん…?」
目が覚めたらおでこには冷えピタが貼られ、キッチンの方からいい匂いがしてきた。というかなぜ降谷さんがうちにいるんだろう。
「お前が体調を崩したと風見に聞いてな。」
「…忙しいのに、すみません。」
「気にするな。」
「あの、家はどうやって…。」
「これを見せれば大抵の場所は管理人が開けてくれるさ。」
「…職権乱用、ってわけですね。」
警察手帳を再びポケットに入れ、もうすぐできるから食欲なくてもちゃんと少しは食べろよと声が聞こえてきた。そういえば汗もたくさん掻いたのか、朝よりは体の火照りは消えた気がする。
「体、起こせるか?」
「あ、はい…。」
「汗、すごいな。まず着替えた方がいい。」
「…はい。」
「濡れたタオルを準備するからそのまま待っていろ。」
至り尽くせり。部下のこんなところまで面倒を見てくれるなんて…何だかんだやっぱりいい人なんだよなあこの人。よく見ると今日はバーボンだったのか、黒っぽい服で身を纏っていた。
「自分でできるか?」
「…だるい。」
「着替えは?」
「あ、そこのクローゼットの3段目、です。」
「了解。」
あれ、なんだこれ。着替えを持ってきてくれた降谷さんにそのままお着替え任せるのか。というかこの人、1か月前私の目の前でオナニーしてた人だぞ。いいのか?
「脱がせるぞ。」
「……。」
あれ?あれ?よくわかんないけどもう思考も上手く回らなくて、私はプチプチとボタンを外されるのをじっと待っていた。いやまって、やっぱりやばくない?
「あ、ふる、やさ、」
「…ん?」
「やっぱり、自分でやります。」
「でも、」
「…はずか、しい。」
「っ…じゃあ俺はあっちを向いてるから、終わったら声を掛けてくれ。」
「は、い。」
私は着替えとタオルを受け取り、朦朧とする意識の中で着替えを無事に完了さえた。その後降谷さんがつくった卵粥を食べて、買ってきてくれた薬を飲みまたベッドに逆戻りした。だけどさっきより全然気分はいい。
「じゃあ俺はこれで出るが、何か困ってることはないか?あ、ゼリーや飲み物は冷蔵庫の中に補充しておいた。あと、」
「ふるやさん。」
「ん?」
「あ、…あ、ありがとうございます。」
「……。」
「すこし、一人で寂しかったので、ふるやさんが、きてくれ…嬉しかったです。」
「…そうか。」
「ありがとう、ふるやさん、」
その後降谷さんがニコッと笑った気がしたけど、私は深い眠りについた。今日のことで降谷さんへの信頼ポイントはまた1戻った気がする。