本当は上司はかっこいい人


「おい辻川…お前また降谷さんと喧嘩したのか…?」
「違いますよ〜。ただ今は降谷さんと喋らないって言う賭けを降谷さんご自身とやってるんです。だから気にしないでください。」
「…あの顔、やばいぞ。」
「…見ちゃダメです。」

まるで人でも殺しそうな表情で仕事にあたっている降谷さんは、本当にあれから一切私に話しかけなくなっていた。公安部内は一瞬ざわついたけど、今は落ち着きを取り戻して普通に仕事ができている。いつもの日常が戻っていた。

「よし、あ、これ風見さんでも確認大丈夫ですか?」
「…可哀そうだから降谷さんのところ行ってあげてくれ。」
「……分かりました。」

私は出来上がった資料を手に取り、降谷さんのデスクまで向かう。きっとその様子を私が自席を立つところから見てたんだろう、降谷さんはそわそわとしていた。

「降谷さん、こちら御確認お願いします。」
「ああ。」

あ、この感じ。懐かしいな。私がとても称えていた頃の降谷さんだ。仕事ができて、隙がなくて、部下に慕われていて厳しくも優しい。

「辻川、ここだが報告書と照らし合わせると、」
「好きだなあ…。」
「…は?」
「…へ?」

やばい。口に出てしまった。私は思わず口で手を抑えた。降谷さんも口をパクパクとしているようで、私は思わず渡した資料をバッと奪い取った。

「すみません!!やり直してきます!!」
「あ、お、おい!」
「降谷さんとは、今現在業務以外のことはお喋りが禁止となっているはずです!では!」

私は赤くなる顔を資料で隠しつつ走って自席まで戻った。


「…どうしたんだ。」
「…どうしよう、風見さん…私、やってしまいました…。」
「何をだ?」
「うっ心がいたい…。」
「…とりあえず仕事しろ。」
「はい。」


*


「降谷さん、こちらですが…降谷さん!?」
「…風見、」
「どうかされたんですか!?お疲れのようですし、仮眠室に行くのもいいかと、」
「どうしよう…俺は、どうしたらいいんだ…。」
「…はい?」
「辻川が、可愛すぎて無理だ。」
「…元気そうで何よりです。」