終幕とそのあと


「第2位、日本。おめでとう。」

勝ち点10、これまでで最高順位。しかし最終戦、中国との試合で負けてしまった日本は惜しくも2位という結果で今回のワールドカップは幕を閉じた。それでもこの順位はスタッフ陣にも大きな影響を与え、選手共々先行きの明るい結果となった。

「いや〜すごいね、本当によくやったよ。」
「島田さん!いつからこっちに?」
「お〜辻川、よくやってるようだね。皆いい緊張感を保っていたから声を掛けないでいたんだ。お疲れ様。」
「ありがとうございます、本当に選手がよくやってくれました。」

島田さんとお会いするのはそれこそ私が一軍に繰り出すことが決まった時振りだ。1軍なんて嫌だと言っていたあの頃がもはや懐かしい、そんなことを思っていたら島田さんが約半年前が懐かしいね、と声を掛けられた。

「ふふ、同じこと思ってました。」
「だろう、どうだ?1軍のマネージャー、やってよかったかな?」
「…そりゃ、もう今はこうして配属してくれたことに感謝しかないです。」
「それはよかった。」

選手が表彰台に上がるところを見て、心の底からそう思う。もしあの時本当に拒否をしていたら、この感動はきっとテレビ越しに、しかもこんなに深く感動を味わうことはなかった。あの頃の練習だったり、一つ一つの試合だったり…こうして積み重ねてきたものが結果と結びついたのだ。それに私は…、

「影山くん、」
「っへ!?」
「君のこと、かなり頼りにしてたんだって?」
「…ああ、いや〜頼りにされていたかは分からないですけど…でも私は信頼してました。」
「ふ、そうかそうか。彼は来月中旬から海外遠征に呼ばれたそうだよ。」
「そ、うなんですね。」
「君は?」
「……え?」
「影山くんについていかなくていいのかい?」

まさかそんな提案をされると思わなかったので吃驚する。もしかして影山さんとの関係が協会にバレてしまったのか、とビクビクすると島田さんは笑っていた。

「辻川は分かりやすいね。もしかして?と思ったけどそれじゃそうですって言ってるようなものだよ。」
「……すみません、」
「彼らはアイドルじゃない。だから協会は恋愛事にまでとやかく言わないさ。ただ他のスタッフやメンバ―から色々聞いていたからね、」
「え!?ほ、他の方も知ってるんですか!?」
「気が付いてないとでも思ってる?、と安田くんが言ってたよ。」

私は思わず頭を抱えた。気を付けていたつもりだった、極力2人で会うことだって人目を避けていたし練習中だって影山さんを贔屓してみていたことは一切ない。なのにどうして気が付かれてしまったんだろう、と頭を抱えていると島田さんが笑ってちなみに君じゃないよと声を掛けた。

「辻川じゃなくて、影山くんの方さ。」
「……へ?」
「休憩中、気が付けば君のことを目で追ってるらしいよ、彼。」
「っ…そ、れは、気が付かなかったです。」
「まあバレーバカと言われた彼が急にそんな風になったら周りは察するよなあ。でもそれで彼は今回ブラジル戦で大きな結果を残した。だからきっと誰一人として君たちの関係に文句は言わないさ。」
「…………」
「そして協会からのバックで君を影山くんのサポートメンバーとして今後チームに戻ってからもつくことは可能だ。我々としても彼が今後海外でステップアップをしていくのにそうすることが適していると判断はしている。どうだろう?」
「………拒否権はあるんですか?」
「ふ、そうだなあ。じゃあないってことにした方が考えすぎの君にとってもいいだろう。なしでいこう。」

自分の本心が顔に出ていないか心配になる。この先の影山さんとのこと、もちろん不安じゃないなんてことはなかった。それでも彼のバレーボールに期待と夢をもっていたから、決して私との関係がなくなっても彼のバレーがどこかで見れればそれでいいとも考えていた。だから島田さんからのこんな素敵なレールを受け取れることに嬉しさがこみ上げる。じゃあ詳しくはまた年明けに業報で連絡する、と言って島田さんは行ってしまった。私は未だ表彰台に登っている彼を見て精一杯拍手を送った。


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