旅立ちの日(完)
時は過ぎ、今日は私と影山さんが日本を経つ日。
お見送りには両家の家族、島田さんを始め協会関係者の方々、そして及川さんもなぜか来てくれた。
「じゃあね飛雄ちゃん、せいぜい足掻けよ。」
「はい。」
「みのりちゃん、飛雄が嫌になったらいつでも戻ってきていいからね?」
「あはは、そんな無責任なことしないですよ。」
「及川さん、みのりに変なこと言わないでください。」
「本当のこと言ってるだけです〜!」
またこの人たちは、と思っていると協会の人たちが騒がしいなあと楽しそうな声が上がる。私はにこやかにその場を過ごし、自分の家族にも飛雄のご家族にも挨拶に回る。
「身体に気を付けてね。」
「お母さんとお父さんも。また連絡するからね。」
「ちゃんと写メも送ってよ?約束だからね?」
「ふふ、何それ初めて聞いたけど。」
「あらやだ、じゃあ私の方にも送ってくれる?」
「え、あ、じゃあ飛雄さんの写真送りますね。」
「いやよ、2人で写ってるの。送ってね?ねえ辻川さん?」
「そうよお、絶対。」
「…分かりました。」
「ふふ、安心。」
「じゃあね、頑張るのよ。」
「ありがとう。行ってきます。」
私と飛雄は皆に見送られながら飛行機に乗った。
「ねえ、頑張らないとだね。」
「…ああ、ぜってー強くなる。」
「うん、期待してる。」
「俺が今よりも日本の勝利に貢献できる強い選手になったら、結婚しよう。」
「……へ?」
「次に日本へ戻ったら、結婚しよう。」
「ま、」
「俺がみのりを幸せに」
「まって!?いきなりプロポーズってなに!?しかもこんな、これからバレーボールをしに行くんだよあなた!それなのになんで、」
「?なんか可笑しいこと言ったか?」
「可笑しいよ!今の流れで結婚は可笑しい!」
「でもさっき家族にも言ったぞ。」
「は、」
「いいって。」
「っ〜〜!」
「ダメ、か?」
そんなの、断るわけないのに。そうやって聞けば何でもいいと言われることにもう気が付き始めてるくせに。私は悔しくてじゃあしっかり強くなってみてよ、と強がったことを言ってみたりして嬉しい気持ちを誤魔化した。
「みのりがびっくりするくらいでっかい男になってやる。」
「……じゃなきゃ結婚してあげないんだから。」
「っおう!」
そしてイタリアに着いた矢先、宿舎で指輪を渡された私はまた大きな声でどうしてと声を上げることになるのはまだ知らない。
end.