コヅケンと結婚したい
「いいね〜、そのポーズ、あーわかってる、最高!超セクシーだよ〜、いい!いい!完璧!はいオッケー!」
「お疲れ様です〜!はい、ガウンお掛けください!」
「ありがとうございます〜、お疲れ様でしたぁ」
「いや〜辻川ちゃん今回も最高!2ヶ月後のアップ期待しててね〜!」
肩にポンと手を置くカメラマン、それ今の時代セクハラになるから気をつけな。なーんて心の中で思いながら苦笑いをして私は控え室に戻る。羽織ってるガウンの下はほぼ布面積の無いマイクロビキニ。先ほどまで取っていたポージングはM字開脚やら四つん這いやらそんなんばっか。別に、これが評価となりお金に繋がるなら私はやるけど。
グラビアアイドル。アイドルなんてザラじゃ無いけど世間的にはそれをグラドルという。水着や下着姿で寝ポーズとって、大して知らない人からはAVと一括りにされることもあるけど私はあくまで男性との直接的絡みは無い「グラビア」での活動に徹している。勿論スチールだけではなくムービーもこなし、所謂男性のオカズ動画を量産するのがお仕事だ。
息を吐きながら衣装を脱ぎ、自前の下着と洋服を8時間振りに身に纏い目の前に広がる鏡に映る自分を見るとたまにまだこんなことしてるのか、とも思う。でもグラビアは一般事務で働くよりも稼げるし正直楽して生きたい私にとってはAVみたいに疲れることもないヨイショされて多少のセクハラを我慢すればいいだけのお仕事、性に合ってるんだとは思う。
だけど無性に虚しくて、寂しくて、消えたくなる時がある。
世の中の男がこんなものを求めているのか、そんなふうに冷静に考えてしまう。そしてそれを躊躇無くやりカメラに笑顔を作る。そんな自分も気持ち悪い。
「みのりさん、帰りの支度できた?」
「うん。」
「じゃあ本当に今日送って行かなくていいの?」
「へーき、だって山ちゃんの車乗ってくと別タレントの回収もついでにされるでしょ?わたし今日コヅケンの生放送あるから忙しいの〜」
「はいはい、世界のコヅケンだもんね、じゃあ気をつけて帰ってね、また明日。」
「はーい、」
こんな腐った世の中、そんな中で私の唯一の救いがある。それがYouTuberのコヅケンがあげるゲーム動画だ。こう見えて結構ゲーマーな私はコヅケンのシンプルでカッコいいゲーム捌きが好きで、チャンネル登録数がまだ20人ちょっとの時から彼のことは知っていた古参だもん。たまにやる生配信の時以外は天の声みたいな形で声も変えてしまっているからどういう人か未だに謎に包まれてるけど、今日みたいな生配信の時はわりと素の声を出してくれるからファンにとっては超貴重。
てか多分、コヅケン、普通にカッコいいと思う。何やら昔バレーボールでIHに出たこともあるとか、そんなスポーツも出来るゲーマーいる?多分探せば写真とか…出てくるんだろうなぁと思うけどそこまではしない。夢見たいもん。想像しているうちが1番楽しい。
あとコヅケンのいいところが、他のゲーム実況者のように下ネタ挟んできたり下品な言葉を使うことが絶対に無い。私が知る限り、無い。
「あ〜コヅケンと結婚したい」
タクシーに乗り込み、夢みたいな事をぼそりと呟いたあの日から1ヶ月。まさか自分がコヅケンと出会う瞬間が来る事を私はこの時まだ知らなかった。