AS1

『でました影山選手の2アタックー!!本大会でもきれのある2アタックです!!超大型セッターに我々は何度驚かされるでしょうか!影山選手、止まりません!!』

「はー…すごいなあ。」

会社帰りに電気屋さんに並んでいたテレビで今やっている大会の様子が流れていた。もちろん録画済みだけど、こうやって影山くんの活躍を目の当たりにすると本当にこの人と付き合っているのか夢のように感じる。

「影山選手本っ当にかっこよすぎ。」
「ねーわかる!でも実は天然らしいよ!」
「えーまじで?ギャップじゃん!」
「やばいよね〜!超付き合ってほしい〜!」
「やだわたしが付き合いたい〜!!」

女子高生の会話におどおどとしながら私はこそこそとお店を出た。今日は金曜日。残業も終え、買いものをして家に帰ってきた。

もちろん、影山くんと付き合ってることは誰にも言っていない。同級生のえっちゃんにも、言っていない。別に悪いことをしているわけではないんだけど、何となくいいずらいところはあった。

シーズン真っ盛りの影山くんからは既に1カ月くらい連絡がなく、私からも何となく連絡が出来ずにいた。本当はがんばってね、とか体は大丈夫?とか連絡したかった。けど、それすらも迷惑になってしまう気がして躊躇ってしまった。

「録画してたの見よっと。」

私は一人用に夜ご飯を作り、テレビの前に座った。登場シーンから影山くんが輝いて仕方なかった。

「かっこいいなあ…。」

バレーをしている影山くんを見るのは、実は初めてで。同じ高校だったのに一度も影山くんのバレーをしている姿を見てこなかったので本当にもったいない気がした。

あの頃からもっとちゃんと見れてればなあ…そう思っていると、インターフォンが鳴った。何か頼んでたっけ…?私は印鑑を持って扉を開くと、目を疑う人がそこにいた。

「え、…え?」
「うす。」
「え、ええええ!」
「え、」
「だって、今さっき、テレビで、!」

そう。何故か目の前には影山くんの姿があった。試合が終わった後だからか、ジャージに大きなバックを背負っていた。とにかく吃驚して開いた口が塞がらなかった。

「試合、今日でけり付いたから。」
「…そ、っか。えっと、お疲れさま…あ、狭いけどどうぞ。」
「おじゃまします。」

実は影山くんがうちに来るのは初めてだ。さっき少し片づけておいてよかった。それにしてもここに影山くんがいる違和感がすごい。でもどうしよう、すごく嬉しくて舞い上がってしまいそうだった。

「あ、ご飯は…、」
「…まだ。」
「えええ…来る前に連絡してくれればちゃんと準備したのに…。」
「…わるい。何か早く会いたくて。」

キュンっと胸が鳴った。私は目を反らして台所に向かった。自分で食べようとして作った適当なご飯だけじゃダメだ。何か作ろうと思い、冷蔵庫を漁っていると後ろから影山くんに抱きしめられた。

「か、影山くん…?」
「…会いたかった、辻川に。」
「…わ、わたしも会いたかったです 」
「何で敬語。」
「えっと…緊張しちゃって、」
「…こっち、向いて。」

影山くんの一言に吸い込まれるようにわたしは冷蔵庫から影山くんを目いっぱい視界に入れる。もうどうしよう、目を合わせるのも恥ずかしいくらいカッコいい。彼が出てる試合が流れているのも忘れて、私たちはどちらともなくキスをした。

「…ごはん、」
「ん?」
「なに、食べたい?」
「…辻川がいい。」
「っ…わたし、でいいの 」
「当たり前だ。」

1か月連絡もしないで久しぶりの再会だったのに、私たちはその期間を埋めるように強く抱きしめあった。