そのグラドル知らない
「研磨さん!頼みます!可愛い後輩からの頼みを!何卒!」
「…………売れっ子モデルが土下座とか………、少しは恥じらいを持ちなよリエーフ」
突然、でもないか。
前の日にリエーフから連絡があった。内容は、あまり見てない。でも確か明日直接!詳しく!話します!みたいな感じだった気がする。
高校の、しかも部活のメンバーとは大人になった今でもたまに会ったりしていた。クロは相変わらずだし、虎は東京で練習試合とかある前の日は絶対うちに泊まってくる。実家行けばいいのに。リエーフは、そういえば久しぶりな気がした。
「で?そのなんちゃら、って人がおれのファンだから一緒に付いてきて欲しいってこと?」
「そうなんですよぉ〜ほらこれ!この表紙の辻川みのりちゃん!超可愛い顔なのにHカップ!すごくないっすか!?」
「…………何とも思わないけど」
「えーーー!研磨さんまさかの貧乳好き!?」
「……はぁ、話はそれだけ?こう見えておれも忙しいんだけど。」
「あーーわかってます社長すみません!でもまじでみのりちゃん超可愛いのに業界で超ガード固いで有名で!俺何とか食事だけでも〜って思ってるんすよ〜!!」
「…………ウソつき」
「ハイッ嘘です!!食事に行けたらそのまま持ち帰ってHカップ触りまくりたいです!!」
リエーフのファンはまさかリエーフがこんなやつだとは思ってもないんだろうな、と街中にあった広告写真を思い出す。研磨さぁん、と撫で声を出されても、おれはHカップよりもゲームしたいし、万が一付いて行ったとしても最初は構われるけどその後はリエーフがいいように話して楽しげな2人の会話を肩身の狭い思いをしながら最低2時間はいなきゃいけないことになる。時間の無駄すぎ。
「リエーフならおれなんていなくても誘えばいけるって」
「いやだって超有名俳優Sが誘った食事も断ったらしいんすよ〜!?俺だけじゃぜっったい相手にされない自信あるっす!」
「…………おれがいたところでそんな変わらないよ」
「いーやそれがみのりちゃん、Twitterの紹介ページにもコヅケンの名前かくほど重度なコヅケンオタクなんですよ…だから研磨さんいれば絶対来てくれると思う!!!」
「…………報酬は?」
「そりゃもちろん!研磨さんが求めるものなら何でも!」
だから研磨さん、お願い。
昔からリエーフのお願いはなかなか断れなかったっけ。ふと高校時代、早く休みたくて帰る途中だったおれの腕を引き留め練習させられた事を思い出す。大概おれも後輩に甘い。
「……超美味しいアップルパイ。」
「へ!?いいんですか!?!?」
「都合合えばね」
「やったーーー!!都合合わせに行くしアップルパイなんて全国各種取り揃えちゃいますよーー!!っしゃー!!」
「今回だけだからね。もう次はない」
「うす!!きっかけさえ貰えればこっちのもん!あーありがとう研磨さーん!!いや世界のコヅケンーー!!!」
本当に嬉しそうなリエーフを見てまあ、いいかという気持ちになる。どうせリエーフのことだ、見栄を張ってめちゃくちゃいいご飯屋さんに連れてってくれるに違いない。
そんな事を考えながらその時は名前も覚えられない雑誌の表紙の人のことは直ぐ忘れてしまった。