コヅケンに会いたい
「今日はよろしくお願いします!」
「よろしくお願いします」
今日はファッション系の現場で久しぶりに男性との共演となる撮影だった。私のファンの人が基本的に男性との共演を非常に嫌がるので数は多くないんだけどよくマネージャーこの仕事受けたなぁ、と思いつつ指定の下着を付けガウンを羽織ってスタジオに入ると共演者である灰羽リエーフさんがキラキラとした顔で男子高校生並みに大きな声で挨拶をしてきた。灰羽さんのことは街中の広告とかで見るくらいだったけど、あまり大きな声を出すイメージがなかったので少し驚いた。
「では2人には身につけてる下着を大体にセクシーに見せてくれると嬉しいです!絡みを撮った後に灰羽さん、辻川さんの順で各自撮影に入ります。適宜ポージングの指定もさせていただきますが、自由に動ける場合はお2人に任せたいと思っていますのでよろしくお願いします!」
「はい」
「わっかりました〜!」
カメラマンの説明も終わり、メイクの軽い手直しをされた私はガウンを脱ぎ灰羽さんの隣に立つ。そして感じる隣からの熱視線。え、この人カメラじゃなくて私のこと凄く見てない?
「…………あの、何か?」
「あ!すみません!めっちゃ綺麗でめっちゃ見ちゃいました!」
「ははは!灰羽くん撮影前からかますね〜!」
「いや!だってやっぱ辻川さん異次元級の美しさだから!すげぇっす!」
「………ソンナコトナイデス」
とか言っておっぱいしか見てなかったんだろうな、どうせ。この顔の綺麗なモデルだって所詮男には変わりない。あー、おっぱいすげぇ、触りてえ、犯してえって思ってんだろうな。ほんっと気持ち悪い。
「じゃあ辻川さんのこと見たい気持ちも分かるけど最初はカメラ目線からお願いします〜!」
「はいッ!」
早く撮影終わらせてコヅケンの昨日の生配信のアーカイブが今日までだから見返したい。私が信じてるのはコヅケンだけ。
なんて、気持ちを殺してシャッターが下りれば私はちゃんと仕事をする。腕を絡めるのも、足を絡めるのも、腰を添えるのだって動じない。というか下着メーカーにしてはなかなかギリギリを攻めてるな、と思いつつもカメラマンからのオッケーが入ればそれでよかった。
「あ、あの!」
撮影後、私より先に終えてたはずの灰羽さんが控え室の外で声を掛けてきた。ああ、面倒な予感。何でこういう日に限ってマネージャーが現場にいないんだろう。
「お疲れ様です」
「お疲れ様です!!あの、まじで辻川さんめっちゃ綺麗でした!仕事もすげぇし、俺めっちゃ動揺しちゃって、」
「ありがとうございます。あの、私着替えるのでいいですか?」
「あー!ちょいまって、あのこの後時間あったりしないかな〜なんて……あ、もちろん2人じゃないんすよ!!辻川さんが好きな」
「すみません、そういうの事務所的にNGなので」
「あっでも!」
「お疲れ様でした、失礼します」
今注目度ナンバーワン若手モデルだかなんだか知らないけど私じゃなくて喜ぶ女の人はたくさんいるでしょうよ。あーあ、後でネットに書かれるかも。グラドルのくせして、って。まあいいけど。言葉を遮って控え室の扉を開けようとした瞬間、コヅケン!と私の大好きなワードが飛ぶ。我ながら欲に素直だな、と思うけど何で灰羽さんがそのワードを発したのか知りたくなって振り返ると灰羽さんが思ってた以上に必死の顔をしていた。
「好きですよね!?コヅケン!」
「……まあ、はい」
「俺!実はコヅケンの高校の後輩でして、」
「!?え!?本当!?」
「は、はい!で!辻川さん、コヅケンのファンって言ってるの聞いてたから、えーーっと…あの、後輩として!嬉しくて!俺の先輩のファンってことに!?だから交流深めたいなぁと思ったのと、この嬉しい気持ちをぜひ本人にと、」
「ほ、本人!?え、何どういうこと?」
「早い話今夜俺とコヅケンと辻川さんで飯!行きませんか!」
「い、行きたい!」
おい、さっきまでの私。
と突っ込むのは無しにしてくださいネ。