このグラドル楽しそう
「コヅ……研磨!こっちー!」
「……声でか」
待ち合わせの日。平日だからか、オープンして間もないからなのか人はまばらで彼女を見つけることは容易かった。というか前回とは打って変わって雰囲気の違うカジュアル路線の格好は、おれの好みというものを模索しているのだろうか。
「ふふっおはよう!」
「……うん、おはよ」
「私お昼にオフで誰かに会うって久しぶり。すっごい嬉しい!」
「それはよかったね」
「もう!相手にしてないなぁ?あっねえ今日のわたしの格好、どう!?結構カジュアルめにしてみたんだけど…好きじゃない?」
モデルとしての癖なんだろうか、一周する時もおれからは視線を外すことなく洋服を見せつける。前回は確か赤っぽい色のワンピースにヒールを履いていた気がするけど、今回はフードのついたクリーム色のトレーナーにふくらはぎ辺りまである丈のチェックのスカートにスニーカーを履いている。
どうどう?と聞いてくるのに気まずさを感じる。いいタイミングで店員さんがおれたちを席まで案内してくれてほっとした。
「もう!教えてくれてもいいじゃん!」
「別に…、まあ普通の男だったらこの間の方がいいんじゃない?」
「そんなの分かってるもん〜私はコヅケンの意見が知りたいの!」
「ちょっと、声でかい」
「あ、ごめんね研磨、……ふふ」
「楽しそうだね」
「うん、楽しい」
心底楽しそうに笑う彼女は徐にメニュー表を開きどれにする?と聞いてきた。その姿が何か既に映画みたいだ。周りにいる男性もチラチラとこちらに視線を向けているのも背中越しにひしひしと感じる。
「ん?どうしたの?」
「……別に」
「そう?じゃあわたしこのお肉プレートとチーズケーキとコーヒーにする!研磨は?」
「ん〜…これとこれ。飲み物は同じやつ」
「ふふ、オムライス、ふふ…かわいい」
「…いいでしょ、好きなんだから」
うん!と言って店員さんを呼びてきぱきと注文をするとまたじーっとおれのことを見てくる。この視線、苦手すぎる。おれは目をそらして目の前の水を飲んだり外の景色を見たり、そんな感じでいると研磨くーんと声を掛けられる。
「……なに」
「ん〜、全然目が合わないなぁと思って。わたしもっと仲良くなりたい。あわよくば付き合いたいと思ってるから、こっち見て?」
「付き!……な、に言って、」
「本気だもん。そもそも研磨以外にこんなに必死にならないよ」
「……なんで、そこまでおれなの…」
「え〜……じゃあこっち見たら言ってあげる」
そう言われては観念するしかないおれはゆっくりと視線をそちらに向ける。そして彼女はまた嬉しそうに笑った。
「わたしがコヅケン、好きな理由、教えてあげる」
絶妙なタイミングで頼んでいた料理が届いて見事に頼んだ料理が反転されてそれぞれのテーブルに置かれたことに肩を震わせて笑ってる彼女はやはり心底楽しそうだ。