「研磨はさ、灰羽さんに私のこと何て紹介された?」
届いたご飯を食べ終わり、デザートにチーズケーキとアップルパイを食べながらそう研磨に話しかける。やっとちゃんと視線が合うようになってきたことが嬉しくてニコニコとその問いの返答を待つ。
「…おれのファンの人がいるって」
「詳細には?」
「あー…グラドルのかわいい?」
「ふふ、でも絶対まだあるでしょ」
研磨は少し気まずそうに、また目を逸らしてしまった。真っ向に人がいる中で嘘をつくのは苦手な人なんだろうな。でもそういうことを直接的に言わないところも彼の優しさだって分かるから、私の愛おしさポイントがぎゅんぎゅんに上がる。
「Hカップの顔が可愛いグラドルとか?」
「!…違うよ」
「あれ、じゃあおっぱい大きいグラドルとか?」
「…………Hカップの天使」
「あはは!それは予想外!え〜灰羽さんそんなこと言ってたんだぁ、面白いね。」
口に運んだチーズケーキは甘かった。研磨はこれくらい甘い方が好きなのかな、また視線を向けるとその視線は先ほどよりも鋭いもののように感じた。
「あ、ごめんね。後輩馬鹿にされてるように感じた?」
「リエーフは馬鹿だよ」
「あー…まあ、そうだよね。私、馬鹿な男って嫌いなんだ。見た目ばかり見てくる人も、女は弱いという感情に浸ってる人も、全部嫌い。生きてる9割の男み〜んな嫌いなの。」
「…………………」
「この業界にいるとね、何をすれば男に喜ばれるか考えてお仕事するの。それが売上と実績に繋がる、嫌いだけどやらなきゃいけない。だって私、その馬鹿な男からお金貰ってるんだもん。矛盾してるよね」
「……仕事なんて矛盾だらけでしょ。いいことだけをしていい仕事が出来る人は一握りだ」
「…………うん。私ね、全部全部気持ち悪くて仕方なかった時期に、YouTubeのコヅケンの動画が流れてきて。この人、人生つまらなそうな喋り方なのにとっても楽しそうって思って。何となく、生放送とか見て…あー男の人だったんだって知った時は正直ショックだった。けど不意にコメントに流れてくる下ネタとかに気持ち悪いって言ったり、例えゲーム内でそういう描写があってもただ純粋にゲームをやってるところを見て、この人は違うって思ったの。」
「……………………」
「私がコヅケンを好きになった理由なんてこんな些細なことなんだけど、あの頃の私からしたらすっごいことだったんだよ。……分かってくれた?」
研磨の返事は無かった。
だけど無言でアップルパイをかじった辺り、またこれは照れ隠しなのかもしれないと思った。