グラドルのポイント稼ぎ
後から来たクロにじゃあ後は宜しく〜なんて伝えられ本当は一発殴りたい気持ちもあったけど律儀にタクシーまで用意してくれたから素直にその車に乗って2人で家に向かった。車内はいつもひっきりなしに喋る彼女にしては塩らしく静かだった。
「わぁ〜…本当に古民家だ…」
「ごめん、人来る用の家にしてないからすっごい汚いのは覚悟して。」
「え、人来る時はどうしてるの?」
「家事代行で雇ってる人いる」
「さ、さすが社長……」
鍵を開けるとお邪魔します、とおれしかいないのにわざわざ挨拶をして靴をしっかりと整える彼女を見て思わずグッとくる。最近彼女に会うとこんなことばかりだ。
3回目のランチ、ゲームの話をしてこれほど人と盛り上がったことはなかったし、4回目のランチの後手作りのアップルパイをもらった時は正直出来栄えにもその行動にも感動した。
もうおれは言い訳できないくらい彼女に惹かれていた。けどこそばゆくて何となく気持ちが伝えられていない。
こういうの言うタイミングっていつなんだろうか。
「研磨〜?ご飯なんかある?」
「……ウーバーたのむ?」
「冷蔵庫開いていい?」
「いいけど、ろくなものないよ」
「ん〜……あ!しば漬けある〜!ご飯レトルトとかある?あと〜うんうん、調味料もあるね!お味噌と冷凍オクラあるしお味噌汁も出来るね〜」
「……レトルトご飯は確か上の引き出し…え、作るの?面倒じゃ」
「ポイント稼ぎしたいも〜ん!ね、使っていい?」
「……うん」
ポイント稼ぎなんてしなくても、と思うけど彼女がとても楽しそうなのでおれはそのままリビングを簡単に掃除する。そしてそこでハッとした。
これ、今日、泊まるのか…?
「いやいやいや…」
「ん?何か言った?」
「…なにも」
「そう?じゃあ研磨はまっててね!」
「……うん」
時刻は22時。普通に考えてこの後車も持ってない自分が家まで送るなんてことも出来ないしタクシー乗ってね、じゃ。なんて言うのも、先ほど1人になりたくないと言った彼女の恐怖心を無視することになる。
そうだ、自分が招き入れたんだ。彼女を安心させたいからそれに頷いたんだ。別に男も女も泊まる分には変わりない。
気にしすぎなんだよ、自分が。
「あ、ねえ何か着るもの借りれる?私何も持ってきてなくて」
「……言っとくけど女性ものとかないからね」
「え?わかってるよ〜研磨の貸してほしい」
「……別に、多分サイズとかそんな変わらないからいいけど。下着とかはさすがに無理だよ」
「あー…ね、研磨買ってきてくれない?コンビニに売ってる綿パンツでいいから」
「は、はぁ!?無理だよ」
「えー研磨ならギリセーフだよ、いけるいける!」
「……あとで一緒に買いに行こう、デザートも買えるし」
「……うんっ!」
だから嬉しそうな顔して笑うの可愛いんだって。……というのは本人には言えないけどおれは逃げるようにリビングの方を片付けを再開させた。あー客間の布団、だいぶ出してないしやばそうだな…今日は布団に包まって畳で寝ればいいか。あっちにはベッド使って貰えばいいし、寝間着…か。
ごそごそと自室に移動しクローゼットの中を探る。高校の頃の学校ジャージなら今よりも小さいしいけるだろ、と思い取り出す。さすがに部活のジャージはぼろぼろで貸せないので見なかったことにした。
そんなことをしているとキッチンから研磨〜?できたー!と普段はしない明るい声が響く。なんか、いいなこういうの。
おれはまだ少し緊張した気持ちのまま辻川さんの元へと向かった。