このグラドルあざとい


お風呂から出てきた姿はいつもナチュラルに見えて化粧をしっかりしていたらしく、印象より俄然幼く見えた。それに自分の名前入りジャージが、思ってたより…なんか変な気持ちになった。今日はもう、お風呂に出たらすぐに寝よう。時間が開けば開くほど煩悩が生まれきそうだ。

「あ、おかえり〜」
「……うん、ドライヤー分かった?」
「うん!使わせてもらった!研磨の髪、乾かしてあげる!」
「いいよ、大体やらないこと多いし」
「だめだよ!染めてるんだしダメージ増えちゃう!はい、ここ座って!」

強引に腕を引かれ椅子に座らされるとドライヤーのスイッチが入った。もう諦めてされるがままだ、と思いぼーっとしてると細い彼女の指が俺の髪を優しく撫でるようにする。

「研磨、髪細いね〜」
「……自分じゃわかんない」
「髪の毛まで猫っ毛だったらますます猫になってたね〜、うわぁサラサラ……すごーい」

人に髪を触られると眠くなるのは自分だけだろうか、こんな状況なのにうとうととしてきた自分に感心する。

「終わったよ〜、眠くなってきちゃった?」
「……ん、ありがと」
「ふふ、もう寝よっか」
「そうだね、じゃあ辻川さんはこっち」

さすがに自分の部屋まできれいに片付けるのは無理だったけど寝るだけだから我慢してほしい。おれは部屋の扉を開けて彼女を通すとベッドの前で座るわけでも横たわるわけでもない彼女を不思議に感じ名前を呼んだ。

「……研磨は?」
「え?おれ……は、あっちで寝るよ」
「……ベッド、ダブルサイズだよね」
「……まあ、でもそれはさすがに」
「…………研磨、一緒に寝て、ほしい」

この一言に先ほどまでの眠気は一気に覚めた。この人、自分が何を言ってるのか分かってるのだろうか。

「……怖いなら辻川さんが寝るまでここにいるよ」
「…………」
「ほら、ベッド入って」
「……いっしょがいい」

あざとい。おれのスウェットを引っ張るような仕草をして数センチの身長差をフルに使って上目遣いをしてくる。
こんなことされたことないけど世の男性は好きな女の子にされた時どうしてるんだろう。悶々とする中でおれは掴まれたスウェットをそっと外すように彼女の腕を引いた。

「……前にも言ったけど、おれも男だから」
「……ねえ、わたしってちゃんとその対象に入ってる?」
「……どういう意味?」
「……わたしのこと、抱ける?」

彼女は気が付いてない。おれが我慢して今ここにいることも、彼女に対する気持ちも。

「……おれ、辻川さんが好きだよ」
「……え、……え?」
「だから抱こうと思えば直ぐにだって抱けるし、そういう対象として見てるよ。……でも今日嫌な目にあったのにそんなこと出来ない」
「っ、まって、……研磨、わたしのこと好きって…ほんと?」
「……ほんとだけど。」
「実はどっきりでしたとか……」
「なにそれ、誰得?」
「だ、だって!……なんか、嘘みたいで……わたし、本当に研磨のこと好きで、これから好きになってもらえるように頑張ろうって思って、……それなのに、研磨はどんどんわたしのツボ抑えてくるし、もうほんと、大好きで、どうしようって…」

この可愛い生き物はなんだ?おれは自分の頬が赤く染まっていくのを感じ、部屋が薄暗いことに感謝すら覚える。もうお願いだからこれ以上喋らないで、と伝えおれは彼女の腕をそのまま引きギュッと自分の胸へと引き寄せた。同じシャンプーの匂い、身体の全てが柔らかくてしなやかで、う…とかあ……とか言葉にならない言葉を発してる彼女が凄く好きだなって思った。

「辻川さんが好きだよ。」
「〜〜ずるいっ…わたしも、研磨が好き」
「うん、知ってる」

目と目が合い、自然と顔が近付いた。柔らかな唇が重なった時、おれは柄にもなく時間が止まればいいのになんて非現実的なことを思ってしまった。