このグラドルの思うがまま
最近辻川さんの様子がおかしい。
「……近くない?」
「へ!?え、あ、そ、そう……?付き合ってるんだから普通じゃ……ない?」
「……そうなんだ」
「……研磨ってパーソナルスペース大切にする人……?」
「…………まあ、どちらかと言えば。」
「……だ、よね。あ、コーヒー飲む?」
「……うん」
「入れてくるね」
ソファを立つ彼女の後ろ姿は心なしか少し寂しそうに見える。付き合う前から軽いスキンシップはあった。腕を引っ張ったり、肩や腰に手を回されたり…まあそれは別にいい。というか今だって別に辻川さんならパーソナルスペースガバガバでもいいんだけど、最近の辻川さんはやたらと近いしやたらと露出度の高い服着てるしやたらともじもじしてる。
自分が身体で稼いでること分かってやってるならそれはずるいし、無意識ならもっと達が悪い。きっと彼女のことだし意図的だろうと思うとあー、誘われてんのかなとか思うと胸の奥がざわつく。
「はい、コーヒー」
「……ありがと」
「私ゲーム一旦休憩するね、客間で休んでてもいい?」
「……別にいいけど、」
「ありがとう。じゃあ研磨はゲーム楽しんでてね」
明らかに無理して作った笑顔だった。自分が、そうさせた。リビングから出て行く彼女の姿を目だけで追いかけ、扉が閉まった瞬間ハーっとため息をつく。
あんな顔、させたいわけじゃない。かと言って早急に彼女に手を出すほどの勇気は自分にない。相手は恐らくおれより遥かに経験豊富だし、童貞ってわけじゃないけど辻川さん相手にはさすがに自信などなかった。抱きたくない、なんてこと思ったことはない。寧ろ身体を寄せられる度にそのまま押し倒してその流れに持っていきたいと何度も頭の中では想像した。いつも余裕のある彼女の、余裕ない顔見たいとすら思う。
「はーーーーっ………」
だめだ、こんなことばかり考えて。辻川さんが嫌いな世の中の男と変わらないじゃないか。そう、このことも念頭にありこれ以上男という生き物への恐怖心や嫌悪感を俺がきっかけで抱かせたくなかった。だからまだ、手を出せない。……とは言えあんな顔した彼女のことをほっとく訳にもいかないよなぁ。
おれはゲームを一旦セーブして彼女のいる客間の扉をノックした。
「入っていい?」
「っ……な、なに?」
「あー……今日はもうゲームいいかなって思って。辻川さんと、いたいかなぁと。」
「……………」
入るよ、と扉を開くと先程と同じく冬なのに短い丈のスカートに胸元と背中がVの字に開いたゆるいニットを着た彼女がヨギボーに横たわって、顔をこちらに向けないことを不思議に思い名前を呼ぶとゆっくり振り返る彼女はあからさまに泣いてましたって顔をしていてギョッとする。
「え、ちょ、なんで泣いて、」
「っ…………」
「……辻川さん、おれ…何してあげられる?」
「………………」
「ごめん、……泣かせたくないし、泣かれるとどうすればいいのか、わかんない。出て行った方がよければ出ていくし、」
「っやだ、ここにいて!」
「……うん、じゃあここにいる。あとは?」
「……ぎゅってして」
「……うん、後ろからでいい?」
そう聞くと辻川さんはゆっくりと体を起こし体勢を変えた。つまりこの場合、正面からがいいということだろう。おれはゆっくりと彼女を正面から抱き締めると彼女の腕も背中に回った。それに合わせるように自分の腕も軽く腰に回すとよりぎゅっと力を込められる。
「……あとは?」
「……ん〜〜〜」
自分より数センチ低いところでもぞもぞと動かれる。正直、いろいろ考えてしまうのであまり動かないでほしいと思いながら顔を背ける。すると研磨、と名前を呼ばれて視線を腕の中の彼女に戻すと頬を赤くした顔があった。あ…これは、吸い込まれる。
「…キス、して」
「…………うん、」
「重ねるだけじゃやだ、」
「…………辻川さん、おれ」
「研磨と、…最後まで、したい」
「っえ、」
「……だめ、かな」
あざとさ1000%、だけどここで今日は…なんてストップが掛けられるほど自分は理性的でもなくて、おれは自分の顔を手で覆いはぁぁ、と息を吐きながら彼女の手首を引っ張り自室まで連れて来るなり早急にキスをしながらベッドに沈んでいった。