そのグラドル俺のだけど
「なぁなぁ、見た?辻川みのりの週プレ!まじやべーよなー!」
「彼シャツのやつエロすぎね?まじで抜けるあの顔」
「わっかるわ〜、あー天地がひっくり返って辻川みのり抱けねえかな」
「その時ができたら俺も呼んでくれおっぱいだけでいいから揉みてえ」
「俺も呼んで…左おっぱいは俺の……」
取引先との会食帰り、コンビニの雑誌コーナーでの下品な会話。普段なら耳に入らないのに内容がみのりのことだったから嫌でも耳に聴こえてくる。世間でこんな下賤な話がきっとどこでも行われてるんだろうな。ていうか右も左も全部あの体はおれのだ。
なんてこと言えるわけもなく、レジにコーヒーだけ持っていきコンビニを出た。
"辻川みのり""週プレ""彼シャツ"
気になった単語に前にクロに言われた検索するなという言葉が過る。だけど探究心は消えなくておれは電子でその雑誌を即座に購入していた。あー……まさか自分がグラビアの為だけに雑誌を買うことになるなんてな、と憐むや否や開いたページに衝撃が走る。
【あの子を手元に】
そんなキャッチコピーと共にまず白い下着姿だけでポージングをきめるみのりの姿に思わず息を飲んだ。そもそもおれは彼女の仕事の顔を知らない。だけどページに映る彼女は紛れもなくプロで、おれの前でへにゃりと笑う姿はそこになかった。次々とページを開けば色んな衣装に着替えて際どいポージングをしている彼女がすらりと並ぶ、コンビニで言っていた彼シャツの抜ける写真ってこれか?というものもあった。
だけどどうしてか、おれはこれで抜ける気がしなかった。
「……この100倍えろかった、」
そう、実物はこんなページに収まりきれるものでもない。まあそんなこと知ってるのは自分だけでいい、と思いアプリを落とした。
するとタイミングよく彼女から電話が掛かってきた。
「もしもし?」
『あ、研磨?今大丈夫?』
「うん」
『あのね、相談したいことがあって…」
『……うち来る?』
「えっいいの!?……あ、あの、実は……もう来ていまして、」
「え……あ、」
「や、やっほー!お疲れ様!」
いつもより少し元気がなさそうな顔はその相談の内容に当てはまるのだろうか、力なく笑ったみのりを安心させたくておれは家の中に入れた瞬間ギュッと抱きしめた。頭を優しく撫でてあげると安心したのか、顔を肩に埋めるような仕草をとる。
「……大丈夫?」
「……ん」
「中、入ろっか。コーヒー飲む?」
「飲むっ」
少し上機嫌になったのかみのりはおれよりも先にととと、と中に入っていく。もうコーヒーメーカーの使い方もマグカップのある程度も知ってる彼女はコーヒーの作り方も知ってるのにおれが入れてくれるのを待つ。どうやら入れて欲しい日、らしい。
「何か入れる?」
「ん〜……ミルク入れよっかな。ある?」
「あるよ、冷蔵庫の中」
「はーい、取るね!」
マグカップにコーヒーを入れ、ダイニングチェアに座る彼女の前に置くとありがとうと綺麗に笑ってミルクを入れていた。おれはそのままブラックの入ったマグを持ちみのりの横に座ると研磨、と名前を呼ばれる。
「なに?」
「……あのね、実は……事務所に、これが届いて……、」
「…………うわ、」
「もちろん、事務所の方は対応してくれるって言ってるから研磨には迷惑を掛けないようにする!でもあの、今日はっ」
「当分うちいればいいよ」
「っ…………いいの?、」
「いいも何もそれ以外の選択肢ないでしょ」
「…………、」
「必要なもの、みのりの家に取りに行こう。おれも手伝うから」
「…ありがとうっ」
彼女の笑った顔に自分の歪んだ感情が少し殺される気がした。