このグラドルを救うのは


「みのり、」
「……ん?」
「……仕事、休んだら?」

一緒に住み始めて2週間が経った。思ってた以上に人と住むことに対して抵抗感はなくて、寧ろ楽しかった。だけど日に日にみのりの表情は重くなっていて、その表情といつもくっついてくる行動が理由を裏付けている。
恐らくまだ事務所に嫌がらせの手紙が届くんだろう。彼女はあの日以降そのことについて触れていないけど、多分精神的にかなりきてる。

「……休んだら、わたしの生活成り立たなくなっちゃう」
「おれ生活に困ってるように見える?別に1人増えても変わらないよ」
「……でもずっとこのままってわけいかないし、研磨にばっかり負担かけられないよ」
「負担と思ってない。別にいいんだよ、みのりなら」
「……………」
「いっそ引退して結婚する?」

軽く聞こえたかもしれない。
でもその言葉自体は本気でそう思った。まだ付き合って半年も経ってない、だけど彼女がいる日々を知ってしまったらもう無かったことに出来ない。今はそう思う。
みのりはぽかんとした後、わなわなと顔を赤くしてそんなこの軽々しく言わないで!と声を上げた。あ、やっぱ軽く聞こえたか。

「研磨はコヅケンなんだよ!?コヅケンがわたしなんかと、……グラドルなんかと結婚したら世間的にイメージが崩れたとか叩かれたらわたしそれこそ死んじゃうよ!」
「別に関係ないでしょ。おれはただのゲーム配信者であってそういう対象じゃない」
「ある!わたしだってそうだったんだから!」
「………説得力すごいね」
「だからっ…わたしは、研磨のも隣に本当はいていい人間じゃなくて……………でも、いたくて、いるんだけど…、」
「みのりはグラドルって評価基準が低いと思ってんの?」
「…………だって、女の身体で、お給料貰ってるんだもん。下賤だっていう人はいると思う」
「おれはプロすごいって思ったよ。……あー、実は前発売されてた雑誌買ったんだけど、全然今ここにいるみのりとは違う顔してたし正直かっこよかった」
「………………」
「だから別にそこまで卑下することでもないでしょ」

みのりは目に溜まっていた涙が止まることなく流れ落ち抱きついてくる。意外と涙脆いしすぐ泣くよなぁ、と思いながら彼女の頭を撫でるとずびずびいいながらけんまぁ、と名前を呼ばれる。

「けっ、こん、するぅ、」
「……ふっ、」
「う"う"〜なんでわらってるのぉ〜、」
「いや、なんかよくあるホテルのディナーでプロポーズとかおれ無理だったから、これで受け入れてくれてよかったなぁって今更ながら」
「うっ、そんなのいらないもん〜〜っ!けんまが、ぐすん、いればそれでいいっ」
「……うん、おれも」


愛おしい温もりをおれはまたギュッと抱きしめた。