チャンスを掴め(side M)
今日は1日オフの日だった。こっちに来てオフの日も勉強づくしで観光にも行ってなかった俺は天気のいい朝の光を見て思い立つ。
【今日時間ありませんか?】
連絡したのは言わずもがな辻川さんだ。
自分が彼女に惹かれてるのはもう自覚していた。いつも優しくてしっかり者で料理も美味くて家庭的。結婚されてるし、美真もいるし、自分のこの気持ちは仕舞い込んでおくつもりだった。だけど…、
(はい、ここにも、どこにもいません)
その言葉の深いところは分からない、けど今はいないなら俺にもチャンスがある。守るものがあった方が人は強くなれると誰かが言ってたからスポーツをする上で恋愛することは悪くないというのが俺の信念だ。
と言っても恋愛経験が多いわけでもないわけだけど、しかも相手は年上のシングルマザー。どう自分のアピールをしていけばいいのかなんて明らかな知識不足だ。悔しいけどあーこういうとき黒尾だったらどうしたかなぁ、なんて思っちゃうんだよなぁ。
【大丈夫ですよ、ただ土曜日で美真の幼稚園がやっていないので同席になってしまうんですが大丈夫でしょうか?】
【もちろん!じゃあ昼頃そっち行きますね】
【はい、お待ちしてます】
よかった、断られなかった。
俺は急いで顔を洗って爽やかそうな私服を選んで髪を整えて約束の時間になるまでロシア 観光地と調べてルートを考えたりなどして時間を潰した。
「ちわ」
「こんにちは」
「やくさん!こんにちはー!」
「おー美真、今日はスカート着てんのか〜かわいいなぁ」
「ママにかってもらったの〜!」
「いいじゃん、似合ってる」
「やったー!ママ!やくさんにほめられた!」
「よかったね〜、あの夜久さん、今日はどちらに…?」
「赤の広場とクレムリンに行きたくて、あと買い物とか行けたらなぁと思ってるんですけど大丈夫ですか?」
「え、」
そりゃ驚くよな、多分辻川さんは仕事で呼ばれたと思ってるはずだからスポセンとかを予定してたんだろう、ちょっと騙したみたいで申し訳なさはある。
「クレムリンならみまもいったことあるよー!やくさんいったことないの??」
「ないんだよな〜俺日本から来たばっかりだからさ、美真案内してくれる?」
「うん!やくさんおてて!そとあるくときはね、あぶないからぜったいにててつなぐの!」
「おー、辻川さん、観光付き合ってくれますか?って後出しですみません」
「……いえ、私たちでよければ、お供させてください」
俺たちは電車に乗り目的地まで足を運んだ。