どうか起きませんように


休日に夜久さんから連絡が入るのは初めてのことだった。彼は気が遣える人だし仕事以外の連絡はほとんどなかったのに、……と思ったらまさかの観光スポットへのお誘い。
もしかしてこれは、仕事では無かったのかもしれないと思った時、先日の「好きになっても問題ない」発言が頭をチラリと過った。
つまり、夜久さんは……わたしを恋愛対象として見ている、ということなんだろうか。

「辻川さん?」
「あっすみませんボーッとしてしまって…」
「お休みの日だしボーッとしなきゃですよね〜」
「いや、あの、あと美真のこともすみませんっ…もう少ししたら起こしちゃっていいので、歩かせてください!」
「いやいや、可哀想ですしこのまま寝かせましょう」

買い物が終わると美真は興奮と楽しすぎる時間のせいか眠ってしまって今は夜久さんの背中に乗っている。安心し切ったその顔を見ると美真が本当に夜久さんのことが好きなのかよく分かる。

「辻川さん、この間言ったことの意味って分かりますか?」
「え!?あ、あの…それは、つまり」
「ははっ、辻川さんでもそんなどもったりするんだ」
「!だ、だって夜久さん突然変なこと仰るから…!」
「変なことですか?俺が辻川さんを好きになること」

ストレートな告白なんて、いつ振りだろう。少なくとも子供を妊娠してから…いや、それ以上前のことだろうな。私がアタフタとしているとまた夜久さんは楽しそうに笑った。美真に向ける笑顔とはまた違う、優しい笑み。

「変、ですよ…だってわたし、子持ちですよ」
「それ関係あります?寧ろ辻川さんと付き合えたら美真もついてくるなんてめちゃくちゃついてるって思ってますけど俺」
「……………」
「辻川さん、仕事だけじゃなくてプライベートも俺に時間くれませんか」
「……………」
「好きです」

ああ、どうか美真が起きませんようにと願いながら、私は直ぐにその視線を逸らすことが出来なかった。