「本日からよろしくお願い致します。」
「よろしくお願いします。」
あれから1ヶ月。私はちょうど家の更新時期があったので影山くん家に本当に同棲することになった。大体影山くんがうちに来ていて、私が影山くんの家に行くことはそれこそ最初のあのときくらいで、やっぱりこの家はすごい。
1LDKで元々家に物は少なく、まるでモデルルームみたいな部屋だった。わたしも荷物を最小限にしてきたけど、もともとこの家に荷物が多くないから余裕で入りそうだった。
「影山くん、洋服とかって、」
「あ、ここのウォークインクローゼット全然使ってないからここ自由に使ってくれ。」
「…はあ〜…すごい。」
「あ、俺の家キッチン道具一切ないから助かる。」
「え、…今までどうやって生活してきたの。」
「クラブチームの学食。」
「なるほど。」
「辻川〜これは?」
「あ、えっとこれ試合のDVDだから、」
「…俺の?」
「そうだ、よ。」
「…見ててくれたんだな。」
「あ、あたりまえだよ!だからえっと、あ、ここに置いても平気?」
「おう。意外と荷物少ないな。」
「うん。捨てたものの方が多かったかも。」
「そうか。あ、寝床は俺元々キングサイズのベッドだからそれで一緒に寝るからな。」
「え、いいよわたしリビングに布団広げて寝るよ!」
「いやだ。一緒に寝たい。」
「…影山くんって意外と我儘だよね。」
そういうと影山くんはむっとしてそんなことねえって言いながらも作業を手伝ってくれた。来週から合宿が始まるらしく、徐々に忙しくなっていくらしいので同棲が始まって直ぐに家に帰れなくなってしまうと聞いていた。
その話をしているときの影山くんのしょんぼりとした顔はまるで高校生の頃と変わらないような感じがした。
「片付いた〜!ありがとう!」
「おう。ご飯でも食べに行くか?」
「でも影山くん写真撮られちゃうかもしれないんじゃない?」
「別に結婚するんだし噂たってもいいだろ。」
「でもファンの女の子は悲しむよ?」
「俺には関係ない。辻川がいればそれでいい。」
「…今全女子影山ファンの敵に回ってしまった気がする。」
「俺がいるからいいだろ。」
「…それもそうだよね。」
ああ。こんな甘い生活が始まってしまって許されるものなのか。わたしと影山くんの、同棲生活が幕を切った。