「おい影山!自主練付き合えよ!」
「…明日から合宿だから俺は帰る。」
「え、嘘だろ!お前どっか悪いの!?」
「別に。体を休めるのもトレーニングだって重さん言ってたし。」
「んなことしらねえってお前昨日言ってた!!」
「…んなことしらねえ。」
「影山今日から彼女と住み始めたんじゃなかったっけ。そのせいじゃね?」
「ハッ辻川さんか!お前辻川さんに会いたいからってそうやって!」
「ち、ちげくねえけど!明日から合宿で会えなくなるんだから早く帰ってもいいだろ!」
「「「おお〜〜」」」
「な、なんか影山から浮いた話聞くとお前も人間だったんだなって安心するわ…。」
「なんすかそれ。」
「あーもーわかったよ!早く帰れよ!辻川さん待ってんだろ!」
「…おう。わりい。」
俺は日向含めチームメイトより先に体育館を出てチャリに乗った。早く帰りたい。そんなこと思っちゃうのは久しぶりだったかもしれない。
鍵を開けていつも通り、扉を開くと辻川の靴があって、中からは生活感のある音がする。それだけでニやけてしまいそうだった。
「あ、おかえり〜。」
「…くっ、」
「え?」
「た だいま。」
好きな女がおかえりって笑ってキッチンに立ってる姿にキュンとしない男はいない。俺は胸がキュンキュンしながら脱衣所に行く。そこに並んだ2つの歯ブラシを見てさらにニヤニヤしてる。
あーもうだめだ。同棲最高。
「ご飯どれくらい食べる?わたし男の子の量ってわからなくて。」
「ん〜…これくらい。」
「おおおすごいね。さすがスポーツ選手。」
「うまそう。」
「あとお味噌汁はい。嫌いなものとかなかった?」
「ない。あっても辻川が作ったやつなら何でも食える。」
「よかった。じゃあいただきまーす。」
「いただきます!」
辻川の作ったご飯はめちゃくちゃ美味くて、家に帰ってこんなご飯が毎日出てくると考えると幸せだ。美味いと伝えれば辻川が少し照れた顔でありがとうって言った。感謝するのは俺の方なのに。
別れる事件から1カ月が経ったけど、本当にあの時にしつこいくらいに言い寄ってよかったと思う。
「お風呂もあったまってるから先に入ってきて?」
「…俺家で湯船浸かるの初めてだ。」
「え、あんな大きいお風呂なのに!?どおりで綺麗だと思った…。」
「入ってくる。」
「うん。」
俺はゆっくり風呂に浸かった。既に辻川のものであろうシャンプーとかが置いてあって、辻川もこのお風呂を使うのかと思うと何かドキドキした。別に今までしたことだって何回もあるけど、それこそ1カ月以上はご無沙汰だ。
今日はしてもいいのか、というか辻川を横にして我慢できるか分からない。ダメだ、考えるのやめよう。
お風呂を出ると、既にキッチンも片づけられ、辻川はソファに座ってテレビを見ていた。意外とテレビっ子なのか、可愛い。
「出た。」
「あ、おかえり。じゃあわたしも入ってきちゃおっかな〜!」
「おう。」
あー早く抱きしめたいしキスしたい。辻川でいっぱいになりたい。そんなことばっかり考えてしまっている。俺はタオルで濡れた頭をがしがしと拭き、普段見ないようなテレビを夢中で見た。
「はー気持ちよかった〜。」
「……、」
「なんかまだ慣れないから、あんな大きいお風呂で湯船に浸かるの旅行みたいな気分。」
「…辻川、の、」
「え、何すっぴんそんなに違うの吃驚した!?いつも何だかんだ暗かったり化粧したまま寝ちゃったりしてたもんね…。」
「高校の頃と、何も変わんねえ。」
「…それは喜んでいいものなのか、よくわからないけど、」
「すっげえ可愛い。」
「うっ…心が痛い…。」
「?髪、俺が乾かす。」
「え、いいよ!影山くん明日から合宿なんだから、もう寝てて?」
「俺がやる。」
「…じゃあお願いします。」
俺の足の間に高橋はちょこんと座り、後ろを向く。このまま抱きしめてしまいたい気持ちを抑え、初めて人にドライヤーを掛けた。そもそも自分でもあまりやらないから加減はよくわかってない。
「人にやってもらうの美容師さん以外で初めて!」
「痛くねえか?」
「うん!上手〜!」
あーもう可愛い。どうしてくれんだこれ。しかも髪から甘いいい匂いがするし、困った。大体終わってドライヤーを止めると、高橋がそのまま振り返ってありがとうとニコニコ笑いながら俺の目を見た。
俺はそのまま辻川の頭を掴み、唇を奪う。ああ、甘い。もっと、もっと深く、そう思えば思うほど俺はどんどん迫り、辻川は甘い声を出しながら後ろに倒れこんでしまった。
「はぁっ、くるしっ、」
「っ…ベッド、いいか?」
「っぅ、ん 」
俺は辻川を持ち上げ、寝室に移動した。ベッドに押し倒すと、先ほどのキスが本当に苦しかったのか目に涙をいっぱいに溜めて、頬を赤くしていた。何でこんなに可愛いんだ。
「辻川、可愛い。」
「っそんなことな、」
「好きだ、本当に、」
「…わたしも、すきっ」
こんなに幸せで俺はこの後大丈夫なのか心配になった。そのまま俺たちはベッドに沈んだ。