月明かりが眩しく感じた(side M)


※チームメイトとの会話はロシア語だと思って見てください。














「衛輔、元気ないな!どうかしたか?」
「ダニール……そっとしておいてくれ」
「こりゃ大変。女か?」
「お?衛輔ようやく遊び始めたか?」
「ちげー……けど、違くねえ、はぁ〜〜」

チームメイトにテンションの低さを指摘されてようやく自分が沈んでることに気付かされた。その理由は一目瞭然、俺は辻川さんに告白をして見事振られた。

『好きです』
『……ありがとう、ございます。でも、それが交際に発展させる為の好きであれば、わたしはお気持ちを受け止めることができません』
『え…、』
『夜久さんとは、お付き合いは出来ないです』


「はぁ…、」

ここまではっきり言われるか、と思うほど潔い返事だった。そこでなんで?どうして?と聞くほどカッコ悪いことしたくないし、その場は笑ってやり過ごした。が、ショックなものはショックなんだ。
あーあ、前よりも軽い気持ちでもう辻川さん家も行けないなぁ、とまた心が沈むのが分かる。しかし恋愛にうつつ抜かせてバレーが厳かになってたら元も子もない。俺は気合を入れ直してコートに向かった。












告白してから2週間は経った頃、もちろん仕事上辻川さんとは会うし普通に会話もしていたわけだけど家には行かず必要なことだけ確認をしていた。今日も練習が終わり家に帰ろうとした時、携帯にtel:辻川みのりの表示が現れた。こんな時間に辻川さんからの電話はめずらしい、と思いつつその電話を出ると久しぶりに明るい声が聞こえた。

『やくさん!?』
「おー、美真か?」
『やくさん!なんでおうちこないの!?』
「……あー……、」
『今日はおうち、くる?』

恐らく辻川さんには内緒で掛けてるんだろう。いつもよりは小さな声でこそこそと喋る美真が愛おしく感じてしまって、また心がふわふわする。そうか、家に行かないということは美真には会えなくなるんだよなぁ。

「今日は行かないかなぁ」
『なんで?やくさん、いそがしいの?』
「うん、まあそんな感じ」
『…みまのこと、きらいになったの?』
「嫌いになんてなってないよ。美真のこと大好きだ」
『……うん、みまも、やくさんのことだいすき』
「また落ち着いたら会いに行くから、風邪ひかないようにな」
『やくそくだよ、やくそく、やぶったらはりせんぼんだからね』
「おお、分かった」
『はやく、みまとまたあそんでね』
「わかったって。お母さんに電話してることバレるよ、もうおやすみ」
『……やくさん、だいすき』
「ありがとう、またな」

電話を切ると美真のことが心配になった。そんな存在じゃないかもしれないけど、会わなくなったことで悲しんでるのではないか、泣いているんじゃないか。
大人は勝手だよな、2日に1回も行ってたのに突然告白して振られたからって行かなくなって。

「ごめん…、」

ロシアに来て初めて寂しさを感じた夜だった。