夢の中でも会いたい


私がお風呂を上がり、夜久さんも続いて入ってくると言ってから15分。もう湯冷めしてるはずなのに顔の火照りが消えないのはお風呂の所為じゃないことが明白だった。
守りたい、だなんて男性に初めて言われた気がする。それも年下の、プロ選手だなんて1年前の私には想像も出来なかった。

ソファに座って使ってもいいと言われたドライヤーを使って髪を乾かしているとガチャと扉の開く音がした。それは浴室から出てきた夜久さんではなくて寝室から出てきた美真の姿だった。


「まま?」
「美真っ!……どうしたの、起きちゃった?」
「まま〜っ!」
「うん、いるよ」
「ごめんなさいっ、みま、やくさんにあいたくて、おうちまでね、いったんだけどまよっちゃって、でもね、やくさんがね!みつけてくれたの!」
「うん、そうだね。でももう1人で勝手に行っちゃだめ。ママと約束して?」
「……うん、でもまま?またやくさんとあえる……?」
「……うん、たくさん会えるよ」
「やったー!!」
「お、どうしたどうした?」
「やくさん!あしたもあえる?ままがこれからたくさんあえるって!」

お風呂上がりでタオルを頭にかけた夜久さんは美真のその言葉にきょとんとした後嬉しそうに美真を抱き上げた。抱っこされた美真は嬉しそうにキャッキャと騒ぎ夜久さんに思い切り抱きついている。そして美真ごしに彼と目が合うとふと笑った。

「おー!明日も会える、美真が呼んでくれればいつでも行くからな!」
「わーい!みまね、やくさんとおはなししたいことたくさんあるの!あとやくさんとあそびたいこともたくさんあるしね、いきたいところもたくさんある!」
「ゆっくり全部やってこうな」
「うん!」
「美真、あなたもう眠いでしょ?今日は寝なさい?」
「ん〜!ねない、」
「目がとろとろ、ほら夜久さん髪の毛乾かさないと風邪こんこんしちゃうから降りて」
「……やくさん、かぜこんこんしちゃう?」
「……(辻川さんが風邪こんこんって、可愛すぎるだろ)じゃあ髪乾かしてくるから、そしたら一緒に寝るか?」
「うん!ねる!」

夜久さんはこういう子供の相手をするのに慣れてるのかな、凄く美真の扱いが上手くてびっくりしてしまう。抱っこを下ろされると洗面台に向かう夜久さんの後ろをととと、と走ってついていく美真が何とも健気で我が娘ながら可愛いなと思ってしまった。
明日は私も夜久さんも仕事、練習はお休み。このまま、明日も一緒にいてもいいのかな。慣れない感情に右往左往していると美真が戻ってくるなら私の腕を引っ張った。

「ママもねよう?」
「あ、えっと…ママは別のところで寝るから一緒には寝れないの」
「なんで!?やだ!やくさんと3人でねるんだもん!かわのじ?になってねるの!」
「……川の字で寝るなんて私教えてない……」
「あーさっき俺が教えた」
「や、夜久さん、…あの、わたしはここで寝るので、美真のことお願いしま」
「美真真ん中に挟んで一緒に寝よう、ここじゃ寒い」
「そうしようママ!」
「いやでも」
「今敬語使った罰な。じゃあ美真、ママのそっちの腕優しく引っ張れ!」
「おー!ママ!こっち!」

大好きな人たちが笑いながら私の腕を引く。そんな幸せな光景に少し涙腺が緩んでしまいそうになる。諦めるように引っ張る先、夜久さんの寝室へと入るとそっち詰めて、と彼に言われ壁際を失礼させていただく。3人で寝るには少しだけ窮屈な気がした。

「ダブルだけどまあ入らなくはないよな」
「……ごめんね、これじゃちゃんと身体休まらないでしょう」
「ぜーんせん。寧ろ1人で寝る時より癒し効果で疲れ取れるよ」
「いやしこうか?」 
「美真が可愛くて元気になるってこと〜」
「えー!やくさんもかっこいいからみまげんき〜!」
「はは!ありがとな、よし電気消すぞー」
「はぁーい!」

川の字で寝る、なんて私は小さい頃も早くから1人部屋だったので両親ともした記憶がない。美真の先に夜久さんがいる、という安心感と少しの羞恥心にちらりと横を見ると美真はやはり凄く眠かったのかまだおやすみを言ってから30秒位だったのに眠りについていた。

「秒速で寝たな」
「ふふっ、うん」
「よかった、狭くない?」
「大丈夫。そっちこそ大丈夫?」
「余裕。寝返りもうてる」
「よかった」
「おやすみ」
「おやすみなさい」

初めてな川の字は普段よりも狭い場所での就寝だったのに普段よりもずっとぐっすり眠れた気がした。