助けて欲しい


いつも通り仕事を終え、幼稚園に向かった。するといつもより慌しい園内に違和感を感じ私は近くにいた先生にどうしたのか聞いたら全身が凍る事実を伝えられる。

"美真ちゃんが脱走しました"

そんなこと初めてで、園内で友達と遊んでいる延長戦なんじゃないかと聞くと園内のどこを探してもいないと告げられる。感じたことのない恐怖心に足が動かなかった。
とにかく園側でも探しますので家やお気に入りの公園などいないか探してもらえませんか?と言われ愕然としながらもなりふり構わず走り出した。

「美真っ…美真!!」

名前を叫んで街を走る。すれ違う人がみんな驚いた表情をしていたり、中にはどうしたの?と話しかけてくれる優しい人もいた。10分……30分……1時間……時間がこんなにも長くも短く感じたことはなかった。
近所のスーパーにも公園にも一緒に行った花屋にもどこにもいない、何周してもいない。もう悪い人に攫われてしまったのかもしれない、事件に巻き込まれたのかも……誰か、誰か、助けて欲しい。

「っ………、」

私は気が付いたら彼の、……夜久さんの電話番号を掛けていた。


























side morisuke






「ありがとうございます、じゃあ俺少しお手洗いに」

パーティー初参加の俺にたくさんのお偉いさんやらスポンサーやら何なら女優、モデルとやたら綺麗な人も多くいた。なんだかすごい気疲れもしてしまってお手洗いの手前椅子に座り込んだ。
あー……早く帰ってゆっくりしたい。癒しが足りない。明日は休日だけど恐らく寝て終わるんだろうなぁとボケーっとしてると携帯が震えた。確認をすると辻川さんの名前が出ている、非常にめずらしい。

「もしもし?」
『あ、……あの、』
「……辻川さん?どうかしましたか?」
『や、くさんっ…あの、そちらに美真は……夜久さんのところに、美真は来てませんか…?』
「えっ…美真……?いや俺まだパーティー会場で……美真に何かあったんですか?」
『そ、うですよね…、いえ、すみません変なこと言って』
「辻川さん、俺に出来ることありますか?」

頼まれなくても行くつもりだった。たまたまでもいい、それでも俺に連絡をくれたのが、頼ってくれたのが嬉しくて俺は受付まで走り電話を掛けたまま預けていた荷物を受け取り外に出た。

『夜久さ、ん』
「……ん?」
『……たすけて、くださいっ』
「っ…直ぐそっち行く!」

こんな時に革靴であることを後悔した。だけどなりふり構わず走り出す。きっと辻川さんのことだから家の近所は探しているはず。それに少しだけ気になることがあった。


『やくさん、おうちどこすんでるの〜?』
『ん〜?美真の家から歩いて20分くらいのところ』
『どのへん?』
『ん〜あ、あれ見えるか?あの白い煙突』
『うん!』
『あそこの煙突の近くに家があるんだ、今度来るか?』
『いくー!!』


そんな会話をまだ辻川さん家にいた時に美真とした気がした。もし、もし美真が俺に会いにきてると言うなら……そこにいる可能性はゼロじゃない。
信号待ちで止まった時、【必ず見つけます】と辻川さんにメッセージだけ送り俺はまた走り出した。














「美真ーーーーッ!!」

白い煙突付近までやってきた。夜も更け辺りは真っ暗になっている。こんな中あんな小さな子供1人でいたら危険度が増すだろう。ここは日本ではない、そのリスクは高くなる。
焦りと不安を抱きながら名前を呼び続けると希望の声が聞こえた。

「やくさぁぁ、ん、やくっさんっ」
「!美真!!あーーーもう!やっぱこっち来てたなかお前!」
「やくさぁ、んっうわぁぁぁぁぁん」
「あーよしよし、怖かったな。怪我してないか?痛いところない?」
「うわぁぁぁぁん、ひっく、ひっく、わか、らなくなっ、ちゃ、って、っうええええん、」
「うんうん、ごめんな。俺がちゃんと家の場所伝えてればよかったな」
「うわぁぁぁぁん」

美真は案の定大号泣。しかし見た感じ大きな怪我もしていないようで抱き締めてくる体温に安堵する。おれはそのまま美真を抱き抱え、自分の着ていたジャケットを美真に掛け携帯を取り出した。すぐにあの人にも伝えないと。

「あ、もしもし。夜久です」
『あっ夜久さん、あの実はまだ、』
「美真、見つかりました。ほら、美真、お母さん。ずっと心配で探してたんだぞ」
「まま?」
『み、ま…?本当に美真なのね…?』
「ままぁ!う、ううっごめんなさいい、」
『怪我してない?大丈夫?』
「うんっどこもいたくないよ、まま、あいたいよぉ」
『うん、ママも会いたい。夜久さんに代わってくれる?』
「やくさん!ままがかわってだって!」
「あ、もしもし」
『今どちらにいらっしゃいますか?迎えに行ってもいいでしょうか、』
「うちの近所にいるのでひとまず美真連れてうちに非難する予定です、なのでうちに来れますか?」
『はいっ30分程度で行けると思うので、』
「もう美真は無事なので慌てずゆっくり来てください、これで辻川さんが事故にでもあったら笑えないですからね」
『……はい、あの…夜久さん、本当にありがとうございます』

辻川さんの声は掠れていた。その声を聞いて振られてるのは分かってるのに俺が守らないとなんてことを思ってしまった。