大切なものを大切にしてくれる


叫び枯らした喉、走りすぎて震えの止まらない足、息を肩でしすぎて腕全体上がらないぼろぼろの身体。最後の力を振り絞って私は夜久さんの家はとたどり着いた。



彼に、助けを求めてしまった。

相手からしてみれば都合のいいやつだと思われたと誤解されても仕方ない。都合がいいからと言って夜久さんに連絡をしたんじゃない。夜久さんだから、頼ってしまった。これまで1人で全てやってきたのに、……こんなに歯車を狂わされたのは美真が生まれてからは初めてのことだ。
でも夜久さんは直ぐに動いてくれて、助けてくれて、見つけてくれた。いつの間にかその支えは強く深いものとなっていた。











「夜分遅くにすみません…」
「こんばんは、どうぞ入ってください」
「……お邪魔します」

案内されるがまま中に入るとまだ美真の姿はない。美真は……?と聞くとこっち、と案内されて開かれた扉は彼の寝室だった。

「安心したら寝ちゃったみたいで」
「そ、うですか…よかった……」
「辻川さんもお疲れですよね、リビング戻って座ってください。茶くらいしか出せませんけど」
「あっいえわたしは」
「いいから、ほら。身体も冷え切ってる。こっち来てください」

夜久さんに掴まれた肩が温かい。そこでようやく美真が見つかったことに安堵して涙が溢れてきた。それは夜久さんにも気が付かれ、彼は私の背中に腕を回しポンポンと背中を叩いた。誰かにこんな風に抱き締められることも久しぶりで、それが夜久さんということもあり心臓がバクバクと揺れる。でも何より安心感のある温かさと匂いにされるがまま目を閉じた。

「大丈夫大丈夫」
「怖かったな、もう1人じゃないから」
「安心して」

降り注がれる優しい言葉。まるで泣いてる子供をあやすみたいな、そんな声。年甲斐もなくその優しさに甘えたくなって私はぎゅっと彼の腰の裾を握った。
それからどれくらい時間が経ったのかは分からない。けど少し恥ずかしくなって名前を呼んで掴んでいた裾を外すと彼も察してか腕を離しポンポンと頭を撫でお茶出しますね、とキッチンへと行ってしまった。

「(は、恥ずかしすぎる……!)」

こんな、これ以上のことこれまで経験してきたはずなのに、こんなことが恥ずかしいなんて…学生か!わたしは!と自分で自分に突っ込みたくなる。

「あ、ありがとうございます!」
「いえ。あの…多分、今回美真が俺の家の近所にいたのは多分俺が原因なんです」
「……………」
「前に辻川さん家行ってた時に俺の家の場所とかも簡単に伝えちゃってて…それで多分、俺に会いに来てくれたんだと思います」
「……あ、」
「最近会えてなかったですし、……寂しくさせちゃいましたね」

苦笑いをした夜久さんはやっぱり美真のことをすごく大切にしてくれてるんだ、と思うのと同時に私の大切なものを大切にしてくれる人が、……すごく、好きだと思ってしまった。
どうしよう、私……夜久さんのことが、好き。

「もうこうならないように前ほどじゃないんですけどまた家にお邪魔させていただいてもいいですか?」
「……….……」
「あっもちろん辻川さんも気まずいのは分かってるし家の中とかじゃなくて玄関とかでも」
「すきっ」
「……、え」
「夜久さんが好きです…、好き、なんです」