等身大のきみが
「みのりちゃん!!」
日向さんに追いかけられて追い付かれないわけがないだろう。分かっていたけど日向さんに拒絶されてお前なんて必要ないと言われるのがこの上なく怖かった。
日向さんと一緒にご飯を食べることで人と食事をするのが楽しいことを改めて知った。日向さんと連絡を取り合うことで人と他愛もない話が自分の感情を豊かにしてくれるんだと知った。日向さんがわたしという人間を見てくれることで、わたしは今のままのわたしでもいいんだと思えるようになったーーのに。
1週間ほど前からパタリと連絡が途切れ、こちらからの連絡にも反応がなくて、定食屋でも会えなくて、ああこれはもしかしたら拒絶されているのかもしれないと思った。でも突然のこと過ぎたので理由が分からなくて最後にそれだけでも聞きたいと思って前に今はここの体育館で練習していると話していたことを思い出して待ち伏せをした。そして日向さんを目の前にして気まずそうに目を逸らすその姿にもう嫌われてるんだと思った。
「みのりちゃん!」
「っ離して!」
「離したら逃げるでしょ」
「もうわたしのこと嫌いならほっといてよ!」
「え」
「やだ、っ、ぅ、〜〜ぅぅ、」
「、泣かないで、みのりちゃん」
日向さんはわたしを真正面からギュッと抱きしめながら頭を撫でた。その優しさが今は本当にどうしようもなくつらい。
こんなのまるでわたし、………日向さんのことが好きみたいじゃん。ううん、きっと好きになってしまったんだ。いつの間にか、彼のことが。
わたしは目の前に広がる日向さんの胸元を押して離れようとする。意外にも簡単にすり抜けられたけど依然と腕は掴まれたまま。彼から離れることが出来なかった。
「みのりちゃん、ごめん。俺が身勝手に連絡止めちゃったせいで嫌な気持ちにさせたよね。本当にごめん」
「、も、いい、」
「謝らせて。俺、……この間みのりちゃんが新しいAVが決まったって見て、それが仕事だって分かってるのにどうしても嫌な気持ちになっちゃって……それで勝手に気まずくなってどう連絡すればいいのかも分かんなくなって、連絡止めてました」
「………………」
「でもみのりちゃんに泣かれるくらいなら俺毎日だって連絡する。本当は毎日だって会いたいし君が必要なんだ」
「っ……、ほんと?」
「嘘はつかない。みのりちゃん、……ずっと言ってるけど俺は君が好きだよ」
「、好き、って、エッチ、してるわた、しが、好き、ってこと、じゃなくて」
「等身大のみのりちゃんが好き。今目の前にいる顔ぐしゃぐしゃになりながら泣いてる可愛いみのりちゃんが好き」
「っ、でもわたし、AV出てるし」
「関係ない。……そりゃもう正直な話辞めれるなら辞めてほしいんだけど、みのりちゃんが仕事として誇れるものであれば続けてもいいよ」
「………………」
「今この涙がみのりちゃんも同じ気持ちでいてくれる思ってるんだけど……違う?」
するりと彼の手がわたしの頬を伝う。それが合図かのようにゆっくりと顔を上げると少し照れ臭そうに、でもいつもの笑顔をわたしに向けてくれた。わたしは堪らなくなって彼に再び抱き付いた。
「好きっ」
「……うん、俺も好き」
「わたしのこと、必要としてくれてありがとう」
「こちらこそ。みのりちゃんが居てくれて感謝しかないよ」
「う、ん、っぅ、ぅぅ〜〜」
「あーもう泣かない泣かない!顔あげて?」
「ん、」
「好き。キスしていい?」
「……、うん」
わたしにとって好きな人とするはじめてのキスだった。