自己紹介
「辻川みのりです」
「ん、日向翔陽です!」
「21歳、大学4年生。就職は決まってない、けど親に嘘をついて決まったということにしてます」
「え、そうなの?」
「……決まらなくて、誰からも必要とされてないなって思っちゃって、それでAV業界に入りました」
「………そっか、でもすごい勇気だな!」
「自分でもそう思う。けど思ってたよりもちゃんとしてて、マネージャーさんもメーカーさんも真摯に向き合ってくれて…初めてわたしなんかの為にこれだけの人が動いてくれてるんだって思ったらちゃんとやらなきゃって事務所に所属した時に思ったの」
「……うん」
「だけど、日向さんと付き合うならもう辞める」
「え」
「だって…嫌でしょ?彼女がAV女優だなんて」
「………みのりちゃん、」
「でもこの間終わったやつはリリースを止められないと思う。……ごめんなさい、だけどわたし」
「さっき言ったこと覚えてる?」
「……………」
「俺はみのりちゃんが仕事に真摯に向き合ってるなら続けてもいいと思ってる。本心はごめん、すげえ嫌だけどそれは俺の気持ちを優先して決めることでもないよ。みのりちゃんの人生じゃん」
「………うん」
「俺はAV女優だからとかAV女優じゃないからとかそういうの関係ないんだよ。辻川みのりちゃんが好きなの」
「っ…よくそんな恥ずかしいこと言えますね」
「お、いつもの調子戻ってきたじゃん」
あの後場所を変えて個室の居酒屋に来ていた。日向さんの恥ずかしい直球すぎる言葉は何度聞いても慣れることがない。わたしはまたいつぞやの時のようにお水をぐいっと飲み干した。
「みのりちゃんお家は?」
「錦糸町辺りです」
「あ、本当にあの定食屋さん近いんだ」
「そうなんです。日向さんは体育館近いから、ですよね」
「そうそう!俺は浅草辺りに住んでるよ」
「あ、意外と近いですね」
「ね、今度うち来る?」
「えっ」
「………え!あ!ごめんそういう意味じゃなくて!純粋になんか遊びに来る?みたいな誘いだったんだけど!」
慌ててそうじゃない、と否定してる姿はまさか5歳も年上の男性には見えなくてなんだか可愛いなと思った。行きたいです、といえば日向さんは少し恥ずかしそうに笑って今度おいでと言ってくれた。
その後もわたしたちは色んな話をした。好きな食べ物、好きな動物、日向さんのバレーボールの話、わたしの料理部の話……たくさん話をした。
その日は家まで送ってくれた日向さんと少しだけ帰るのが名残惜しくなった。