大人の的を得た意見


「日向、この後少し時間ある?」
「?はい!大丈夫です!」


練習中偉い人たちが客席に座ってるなぁと思ってたけどまさか自分にその矢が降られるとは思わなかったので日向は顔にこそ出さなかったが緊張した。


「翔陽くんなんかやらかしたん?」
「……いや、何も覚えがないっす」
「また勧誘系なんかな」
「ん〜でもあと2年は断ってくださいって言ってあるんですけどね」
「まあ深刻じゃなければ明日教えてな」
「うす!お疲れ様です!」


日向は急いで着替え足早に会議室へと向かった。そこには1番でかいクライアントの取締役とうちの取締役と部長、そして監督、広報、マネージャーと流石にビビる顔ぶれが揃っていた。お待たせして申し訳ございません!と声を張るといいからそこに座りなさいとうちの取締役が言った。


これはただならぬ事が起きている、そう直感で思った。



「早速本題に入っていいかな」
「はい!」
「では榊くん」
「はい、……実は今日これが週刊文春から送られてきた」


その写真はみのりと水族館に行ったあの日のデートの写真だった。手を繋いでる姿からハグしてる姿までしっかり写真に収められてる。
顔面蒼白、とはこのことかと思うほど日向の中の目の色が失われていく。


「相手の方の情報も出てる」
「っそれじゃ」
「そこなんだよ、日向くん」
「……………」
「普通に高校の同級生とかアナウンサーとかならまだいい。スポーツ選手はアイドルじゃない、恋愛は自由だ。しかし相手がセクシー女優となると別だ」
「、何故ですか?それは職業差別では?」
「そうだね。確かに職業差別だろう。でもスポーツ選手というものはイメージも大切なんだ。この選手がいるからこのチームを応援しよう、という人たちはたくさんいる。恋愛は自由だと言ったが独身で彼女の影を消していた方が女性ファンはつくし印象も良い。もしこれまでバレー馬鹿と言われ爽やかで親子世代にも絶大な人気を得てる日向くんがセクシー女優と付き合ってると世間に知られたら君のイメージはどうなると思う?」
「でもそれはバレーには関係ありません!」
「100%ではない。君がこれまで地道な地域活動などでファンになってもらった人が100%このままついてきてくれると思うか?現地に来るような熱狂的なファンは君の人間性を含めて好きになった人が多い。独身で誰のものでもない君に、だ」
「っ…………」
「君の今回の不祥事で恐らくサポーターは多く減る。これはうちにとっても一大事なんだ、だからこそここにこれだけの人が呼ばれた」


大人の的を得た意見だった。
それでも日向はみのりと付き合うことが不祥事と言われることが腑に落ちなかったしただ好きな人と一緒にいることをこんなにも否定されることが苦しかった。


「ただ幸いなことに相手の事務所さんは彼女は引退を決めてるのであの記事の顔は消されるらしい。まあきっと彼女のレッテルは元AV女優となるだけだろうが」
「!?」
「これが宮辺りなら恐らくここまでの大事にはならなかった、しかし君は違う。恐らくテレビなどでもこのことは大きく取り上げられるだろう。もう記事が出ることは決まっている、これは避けられない。ではこれから君がやることは?」
「…………裏切って、しまったファンの方への謝罪」
「うむ。あともう彼女とは別れなさい」
「は」
「恐らく少なくとも3ヶ月間は記者が追いかけてくる。謝罪を出したところでまた会ったりしたらそれこそ君の印象を下げることになる」
「その記事で俺はもう好感度だだ下がりってことですよね。じゃあ別れなくても」
「謝罪をした後に撮られたらそれこそ言い逃れができない」
「っでも!」
「日向くん。君は既にわたしたちに大きな被害を出しているんだ。その事実はわかっているかい?」
「っ……は、い」
「……女性は誰も1人だけじゃない。違う人を見つけなさい」
「………………」
「話は以上。君には期待をしているんだ、後はプレーで君の真摯な姿を語ってくれ」


ぞろぞろとマネージャー、監督以外の人が出て行った。日向は肩を落とし俯く。ただただ悔しくて悲しくて、でも別れるなんてこと絶対出来ないと思った。


「日向」
「…………監督」
「お前が選んだ人だ、俺は相手がどんな人だったろうと否定はしない」
「………ありがとうございます」
「ただうちのチームは会社に守られてる。それはお前も俺も一緒だ。……残念だが言われたことは聞き入れなさい」
「……………」
「日向、」
「少し、時間をください」



だって俺はまだ彼女と付き合ったばかりで100%大好きでとてもじゃないけど別れるなんてこと出来そうになかった。