ただ普通のこと
「え」
『来週出るみたい、ただもう辻川は引退するから顔は隠してくれということは伝えたからそこは安心して』
「……あ、りがとうございます」
『ただあちらは気が気じゃないと思うよ。まあ一度連絡してみたらどうかな?会うのは近くは記者がうろつくから気をつけな』
「はい、本当にご対応してもらってすみません、ありがとうございます」
事務所から衝撃的な連絡、日向さんとの熱愛報道が出ると報告を受けた。頭が真っ白になる。
これ、もしかしてすごく日向さんに、迷惑をかけてしまったのではないだろうか。マネージャーさんと電話を切った後直ぐに日向さんに電話をかけるも繋がらなかった。普段なら練習してる時間だし当たり前だろうけど胸のざわつきが止まらなかった。
大学から自宅に戻り自室に入ったところで日向さんから連絡が入った。
【電話ごめん、今から出来る?】
「もしもし?」
『あ、直ぐ連絡出来なくてごめんね』
「ううん、日向さん、あの」
『文春の件、みのりも聞いた?』
「………うん」
『ごめん、俺が何も気にしないで人がいるところとか行ったからいけなかったんだ』
「……何かチームの人に言われたりした?」
『あー、とりあえず2〜3ヶ月は会わない方がいいって。記者がうろつくから』
「それはわたしも言われました」
『うん、だからそれは言うこと聞こうと思う』
「そう、ですね」
『あーもうめっちゃ会いたい、連絡はするから』
「……日向さん、あの、多分AV女優が相手だって世間にバレることになるんです、よね」
『……………』
「それって日向さんの印象を悪くしちゃいますよね、日向さん、子供からも人気だって聞いてるしイメージダウンが」
『何で?』
「………何で、って」
『何でAV女優と付き合うことがイメージダウンになるの?』
どう足掻いてもマイナスになるに決まってる。それはAV女優の世間的イメージがただでさえ悪いし、……だから何で日向さんが当たり前のことを聞いてくるのが理解できなかった。
『AVってそんな悪いことしてる?』
「……………」
『みのりも言ってたよね?真摯に向き合ってくれて自分の居場所が作れたって』
「……………」
『なんでそんな真面目に仕事をしてる人たちが世間的にマイナスイメージになるのか俺は全然分かんない』
「……そもそも世の中AV自体がいいイメージないですよ」
『俺めちゃくちゃAVに助けられたし世の中の男は分かると思うけど。……まあ女性の理解は難しいのかもしれないけど』
「女性の方が世間体とか、気にしますよ」
『だから俺がAV女優と付き合うのが無理ってこと?いやそんなの当てつけじゃん』
「…….………」
『好きな人とデートしてそれだけなのに。俺たちそんな変なことしてない、普通のカップルと同じだよ』
普通のカップルなんだ、そっか。
わたし自身が1番わたしがAV女優だということを気にしてマイナスなことばかり考えていた。だけど日向さんは一切そんなこと思ってなかったんだ。
ああ、どうしよう。会いたい、会ってキスしてギュッてしてエッチして日向さんともっと、言葉だけじゃなくて愛し合いたい。
「会いたい、です」
『俺も同じこと思ってる』
「普通のカップルなのに、会えないの」
『………みのり、明日の昼、学校?』
「……明日は休み」
『俺テレビの生放送出るんだ。それ、見てて欲しい』
「えっ何するんですか」
『まだ決めてない。でも明日には会えるようにする』
「っ………、」
『だからそれまで待ってくれる?』
「、う、ん」
きっと日向さんがわたしたちの普通を世の中の普通にしてくれる、そんな気がした。