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「みのりちゃん、最近良いことあった?」
「え?」
「何か数値が順調そうだよ〜?」
「本当ですか?やったー!」
「でも油断せず無理せずね。また入院にならないように。」
「はーい!」
「じゃあいつものだしておくからね。」
「ありがとうございます!あ、先生!わたし、すっごい良いことありました!」
「…恋かなぁ。」

私は先生の最後の言葉を聞く前に診察室を出た。早く、早く学校に行きたい。もっと影山くんのバレーが見たい。気持ちは高ぶる一方だった。

帰り道、私はいつも通りバスを待っていると偶然かロードワーク中の影山くんが目の前を通り過ぎた。

「か、げやまくん!?」
「!?あ、辻川さんか。こんな時間に何やってんだ?」
「私は病院帰りでバス待ってて…。影山くんはロードワーク?」
「…おう。病院って、」
「あ…孝支くんから聞いたよね?わたしの体のこと、」
「あーうん。少し聞いた。」
「うん。それで、今日は通院の日だったんだ。」
「…いつも1人で行ってんのか?」
「うん。うち、両親家にいないから。」
「……。」
「あ、ごめんね。ロードワーク中だったよね、あの…がんばってね。」

ちょうどバスも来たので私はバスに乗ると、何故か影山くんが一緒に乗ってきた。

「え、あ、えっと…?」
「送る。」
「え?でもロードワークは…。」
「その後やるからいい。」
「私バス乗るだけだし大丈夫だよ…?」
「いいから!」

影山くんは私の座る椅子の前に立った。これ以上何か言ってももうバスは発進してしまったから無駄だと思い私は黙った。チラッと影山くんの方を見ると、こんな時でもトレーニングをしているようで、その真っ直ぐな姿勢に思わずにやけてしまった。

「…何笑ってんだ。」
「え、あ…。」

見られてた。影山くんに、見られてた。恥ずかしさで穴に入りたい気分だった。私は顔を鞄に埋めると、影山くんがたどたどしくどうした!と声を掛けてきた。

「ごめん…見られてたのが、恥ずかしくて…。」
「っ…あ、えっといやたまたま見てたら辻川さんニやけてたから、」
「…引いた?」
「…ひ、い、てない、」

顔を上げると影山くんは顔を背けていた。けどその顔は横から見ても赤く染まっているようだった。ダメだ、これ以上私の知らない彼のことを知ったらダメだ。

私は言葉を掛けるのをやめ、外の景色を見た。


気持ちよ、静まれ。私が人を好きになっても、誰も幸せになんてなれないんだから。