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タクシーが止まった場所はすっごい高そうなタワマンの前だった。影山くんはスマートにカードを出して、タクシーを降りた。もちろん私の腕は掴んだままだ。連れられるままに私はエレベーターに乗り、ぐんぐん上がるエレベーターは最上階で止まった。終始無言な影山くんが、今どんな顔をしているのか分からなかった。

扉を開け、鍵を閉めるとようやく影山くんは腕を離してくれた。掴まれた後が赤くくっきりと残っていた。影山くんは靴を脱ぎ、中に入って行ったが、私は玄関で立ち止まっていた。

「…入れよ。」
「…入れないよ。」
「どうして。」
「…影山くんに怒ってるでしょ。腹いせに付き合うって口実を作ってもう1回くらいヤって遊ぶつもり、なんでしょ?」
「違う!」

影山くんは大きな声を出して振りかえった。どうしてそんな顔をしているの。まるで私が悪いこと言ったみたい。

長い廊下を途中で引き返し、未だ玄関から離れられない私の元へと近寄ってくる。私は思わず俯くと、影山くんが私のことを抱きしめてきた。この人は力加減というものを知らないのか、体中が痛くて仕方なかった。

「かげ、やまくんっいたい、」
「っ悪い、」
「…こんなことしても、走って逃げたりしないよ。」
「そうじゃない!…そうじゃない。」
「…影山くん?」
「俺は、辻川だから誘ったし、辻川だから家まで呼んだんだ。腹いせとか、そういうことじゃない。」
「……どうして?」
「どうしてって…そんなのお前が好きだからに決まってんだろ。」
「…え、ま、まって。余計に意味がわからないよ。」
「好きと嫌いの意味がわかんねえのか?」
「そういうことじゃなくて、影山くんが何で私のこと好きなのか、わからないよ。」

私は影山くんをグッと押し返し、距離を取った。力が抜けたのか影山くんはふらっと体をよろけて壁に手を付いていた。弱ってるという言葉が相応しいほどに覇気がなかった。

「好きだから好きじゃ、ダメなのか?」
「……。」
「俺は、ずっとお前のこと好きだったのに、」
「…ずっと?」
「ずっとだ。」
「…だって私たち、高校の頃から一度も会ってないよね…?それに高校の頃だってほとんど話したこと無かったし…。」
「…委員会の時。」
「え?」
「委員会の時、辻川が俺に頑張れって言ってくれて。その時の笑顔が忘れられなくて、…ずっと好きだった。」

ドキッと胸が高鳴った。私より30cm近く大きいはずなのに、壁に横触って首を傾けた状態でそんな言葉を吐くのは何と言うか、可愛すぎる。別に影山くんのこと好きとかそういう感情は無いはずなのに、ドキドキが止まらなかった。

「辻川。」
「…は、い。」
「ダメか?」
「っ…!」

あーもう、何なのこの人は!初めて180cmオーバーの人を可愛いと、母性をくすぐられてしまった。