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人に好きっていうことはこんなに大変なことだっただろうか。そう考えた時、そもそも私は人を好きになることを無意識に避けていたことに気がついた。

それでも真っ直ぐに自分の気持ちをぶつけてくれる影山くんから、私はもう逃げることなんてできなかった。

「影山くんのことが、好きです。」
「っも、もう1回、」
「…好きです。」
「聞こえなかった。」
「嘘、意地悪。」
「もう1回、」
「…影山くんが、好き。」

たった二文字の言葉にこんなに感情を震わせ、こんなに人を喜ばせることができるんだ。影山くんはッシャアアとまるで試合に勝った時みたいに声を上げた。わたしは溢れる涙と笑顔が止まらなかった。

病気とか関係ない。その言葉が、どれだけ私を救ったか影山くんにはきっとわからない。

「辻川さん、ありがとう。」
「っな、にが?」
「言ってくれて。俺すっげー嬉しい。」
「…影山くんは、本当に…、」
「え、な、泣くな!これ以上泣くな!」

このまま死んでしまいたい。そう思ってしまうくらい温かい気持ちでいっぱいになって、涙が止まらなかった。影山くんはおどおどとし、私のことを心配している様子だった。

でもわたしもこんな嬉し涙をしたことがなかったから、止め方なんて分からなかった。顔を膝に埋めると、影山くんがわたしの肩をそっと自分の方へと引き寄せた。

右肩に感じる影山くんの体温が、温かくて生きてる感じがした。夢じゃない気がした。

「菅原さん、は、俺がタイムで引っ込むとすぐに肩をこうやってして、安心させてくれる。」
「……、」
「だから辻川さんにも、やってみる。」
「…ぷっあはは、ありがとう、影山くん、涙引っ込んだよ。ありがとう、…本当にありがとう。」

不器用で、でもこんなわたしのことを好きだと言ってくれる彼のことを、短い期間だけど信じて好きだと言い合おうとそう思った。