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一晩考えた。

私は影山くんに言わない方がいいと思っていた。きっと影山くんは、また困った顔して何も言えなくなってしまう。困らせてしまうのは嫌だから。

でも、私がもし逆の立場で、影山くんが急にいなくなってしまうのは…嫌だった。孝支くんの言うとおりだった。残される人の気持ちを、私は考えていなかった。


東京へ発つ朝。


「何かあったらすぐ連絡ちょうだいね。いつでも帰ってきていいからね。」
「ここはみのりちゃんが生まれ育った街、みのりちゃんの街なんだから。いつでも戻ってきなさい。」
「おじさん、おばさん。ありがとう。」
「孝支は部活に行っちゃったけど、すぐそっち行くから待ってろって言ってたわ。」
「…うん。部活頑張ってねって伝えといて。」
「了解。本当に送らないで大丈夫?」
「うん。自分で行きたいの。」
「…体に気をつけてね。」
「おばさんたちも。また、絶対来るね。」

私は家を出て、電車に乗った。電車は20分に1本。私は次の電車が来るまでに、影山くんにラインを打った。

【影山くん。今日東京へ発つことになりました。影山くんには沢山お世話になったのに、急なお知らせでごめんなさい。いつこっちに戻ってくるかは分かりません。戻ってこないかもしれません。でもこうして影山くんと出会ったこと、影山くんのバレーを見れたことを忘れません。今までありがとう。沢山沢山ありがとう。】

部活と言っていたから見ないかもしれない。けど、それならそれまで。私は携帯をしまい、空港行きの電車に乗った。

さようなら、大好きな街。