「影山!これ、みのりの病院の住所。明日も試合だから、19時までには帰ってこい。」
「…菅原さん、あざっす!」
俺より付き合いが長い菅原さんも絶対に辻川さんに会いたいのに、俺にその道を譲ってくれた。俺は東京体育館を飛び出し、最寄りの駅まで走った。
早く、早く会いたい。
慣れない東京の電車を乗り継いで、俺は目的地である病院に辿りつけた。
「もしかして、影山飛雄くんか?」
「…はい?」
「…いきなりすまない。私は辻川みのりの父です。」
「っ辻川さんの、あ、俺は影山といいまして、辻川さんとは、」
「影山くん。…本当にありがとう。君のおかげでみのりが病気の間も楽しい時間でいられた。本当に感謝している。」
「…俺は何も、」
「みのりと会ってきてくれ。これからも仲良くしてくれると嬉しい。」
「…はい。」
俺は辻川さんのお父さんのことをもっと厳しそうな人だと思っていた。でも想像していたよりずっと朗らかで優しそうな人だった。
何だか緊張の足取りの中、俺は病室までゆっくりと歩いた。
コンコン、とノックをすると中から大好きな声がした。
「お父さん忘れ物でも、…っかげ、やまくん…?うそ、」
「…元気そうだな。」
「っ影山くん、影山くんだっ… 」
俺は辻川さんの傍に行くなりそっと彼女を抱きしめた。あの日と変わらない体温だった。