「本日から配属となりました、辻川みのりと申します。世界と戦う皆様のサポートを私なりにしていこうと思っております。山下さんからの引き続きは済んでおりますが、最初は至らぬ点もあるかと思います、しかし早く皆様と慣れていきたいのでこれからどうぞよろしくお願いいたします!」
挨拶を終えるとよろしくお願いします、と大人数の声が返ってくる。私の新しいスタート地点は平均身長180cmの日本最強チーム、ここで頑張るんだ。
「コーチの阿部です、今日は慣らしなので雰囲気見てもらえればと思ってるのでよろしくお願いします。」
「はい、よろしくお願いいたします!」
「もうチームだから徐々にフランクにしていけたら嬉しいんだけど呼び方名前でいいかな?割とみんなそうだから。」
「はい!私は年齢もあるので阿部さんと呼びますがいいですか?」
「もちろん、選手のみんなにも順番にコミュニケーション取っていってね。」
「はい、頑張ります!」
その後にも監督、トレーナー、他のコーチ陣にも挨拶を個別にしてから練習を始めた選手たちの名簿を見ながら様子を見る。前任の山下さんからは「特に26歳以下の若い子たちには注意してみてくれと言われていたな…そう思い名簿を再確認する。
「1番若いのが影山さん、オーバーワークに注意と…。」
それ以外の26歳以下は及川さん、宮さん、アタッカーの牛島さん、木兎さん、リベロの西谷さん。皆向上心溢れる若者だ。だけど技術だけがすべてじゃない、体をつくる食品管理から休息だってこの年齢には必要なのだ。むしゃらに突っ走るだけが許されるのは10代だけ、私はその管理を任されている重要なポジションでもある。よし、と気合を再度入れてまずはベテラン組とコミュニケーションを取りながらチームの雰囲気になれるのに積極的に輪の中に入っていった。
「え、みのりちゃん寮生活になるの?」
練習が終わり夜ご飯を食べた後たちまち及川さんに捕まったと思ったらどう考えても意味のない質問をされる。けど、まあこれもコミュニケーションの一環だよねと思い片付けの準備をしながら世間話に付き合うことに。
「及川さんも寮生活でしたっけ?」
「そうそう、出身宮城だからね〜。」
「結構若手の方で宮城出身の方多いですよね、及川さんと牛島さんと西谷さん?」
「あと飛雄ちゃんね。」
「あ、そうでした。どなたかと同じ高校でしたか?」
「ぜ〜んぜん?飛雄ちゃんとノヤくんは同じだけどね〜。」
「そうなんですね、でも出身が同じ方がいるだけで心強いですよね!」
「まさか!むかつくだけだよ、特に飛雄は。後輩のくせに生意気だし嫌になるね。」
つんけんとした表情を見る限り、本当に嫌っている様子はなくきっと愛ゆえな暴言なんだろうなと思いつい心がほっこりとしてしまう。それが顔に出てしまったのか、及川さんはぷくっと頬を膨らませ私の口元をぐっと握った。
「お、おいかわしゃ、」
「みのりちゃんって分かりやすいよね。童顔だし。」
「どうがん、かんけーありまふか、」
「ふはっ、かわいい。小動物みたい。」
「もうっ!いい加減離してくださいっ!」
及川さんから距離を取ると随分と楽しそうに、まるで新しいおもちゃでも手に入れたような顔だ。私はあくまでマネージャーという立場なんだから、こんなイケメンに遊ばれても相手にしないんだから…!と冷静さを保つのに必死だった。
「みのりちゃん、これから楽しみだねえ。あ、ちなみに俺は彼女いるから好きになっても駄目だからね?」
「な!り!ま!せ!ん!」
「もしそういう相手見つけちゃったら相談には乗るから及川さんに言ってよね!」
「ありえないですから!もう!」
「あ、俺が彼女いることはもちろんメディアには内緒だからね?ファンの女の子たちが悲しんじゃうからさ〜!」
「…もういいから早く休んでくださいね、アフターケア忘れずに。」
「はーい。じゃあまた明日ね〜!」
私は及川さんと別れ、トレーナーと打ち合わせをしてから念のためと思い体育館に顔を出すとボールをつく音が聞こえそれはこちらのコートまで放たれた。
「ひっ、」
「あ、」
「か、影山さん!?どうしてこんな時間に、」
「あ、あ〜〜頼む、ます、監督やコーチには黙っててください!!」
剛速球にあたるサーブと共に影山さんも私の姿を見るや否やこちらに走って来た。勢いは言葉だけじゃなくて私の肩をぐわんぐわんと前後に振った。正直肩が外れそうだ。
「あ、あのかげやまさ、」
「たのみます!このことは内緒に!!」
「ぐえ、」
誰かこの人のことを止めてください。
next.2人だけの秘密(にはしません)