「送る。」
「え、いいよ!影山くん明日も早いんでしょ?」
「送らせてくれ。」
「駅もすぐそこだし、」
「家まで。」
「電車乗っちゃえばすぐだから、」
「もっと一緒にいたい。だからダメか?」
ああ、本当にこの人は。私は自分で頬が赤くなるのを感じた。思わず顔を反らすと、影山くんは私の手を握った。
「行くぞ。」
「っ…影山くん、」
「辻川、手ちっちぇえな。」
「か、げやまくんが、大きいんだよ。」
「…なんか、いいな。こういうの。」
外は暗くて表情までは分からないけど、ギュッと手を握ってくるこの温かさで影山くんを感じた。さすがに駅付近になると、人も多くなり万が一影山くんのファンの人がいたら困るという理由で手を離した。そもそもこの人駅に行ったらかなり目立っちゃうんじゃないかなとひやひやしている。
「影山くん、普段電車乗るの?」
「いや。乗るのは多分仙台にいた時ぶりだ。」
「いつもタクシー?」
「ん〜でも俺練習か家の近くでしか行動しないから、自転車が1番多いと思う。」
「そうなんだ、この時間混んでないといいけど…。」
金曜の22時はなかなか混む気がするので、少し心配になったが、案の定それは的中した。どうしよう、やっぱりここは影山くんとここで別れてタクシーで帰ってもらうしかない、と思っていたら私より先に電車に乗り込んでいた。
「え、嘘、」
「おい辻川!乗れなくなるぞ!」
「え、あ、うん、」
私は急いで影山くんの後を追いかけた。電車はやはりなかなか混んでいて、朝のラッシュとまではいかないけど私は完全に埋もれていた。
「危ないから捕まっとけ。」
「…うん。」
言われるがまま私は影山くんの腰辺りの服を軽く掴んだ。早く、早く着いてほしい。この心臓の音がバれないうちに、早く。
その思いとは裏腹に、電車はガタンと大きく揺れ動く。周りの人の体重が私の方までかかってきて、私は影山くんに寄りかからずにはいられない状況になってしまった。
「ごめん、」
「…体重掛けていい。」
「だいじょ、っきゃ、」
「っぶね、」
気がつけば影山くんに抱きしめられるかのような体制になり、私はもはや動けなくなっていた。
「降りるまでこのままでいろ。」
「っ…、う、ん ごめんね、」
「…ずっと降りれなくなればいいのに。」
ぼそっと呟いた言葉は私の耳にも届いていた。どうしよう、どんどん影山くんのことから目が離せなくなっている自分がいた。