2軍の日向翔陽さん


「遅れてすみませんした!」
「ただいま着きました、申し訳ございません。」

私と影山さんは何とかギリギリ現場入りに間に合い、影山さんはすぐさまウォーミングアップに入る準備に取り掛かった。私も一安心し、本来のマネージャー業務へと戻る。もちろん血相変えマシンガントークをしたことは他スタッフにいじられたけど、致し方ない。

「みのりちゃん、あと5分遅れてくれたら俺がスタメンやったのになあ。」
「宮さん…すみません、ギリ間に合ってしまって。でも明日はスタメンって聞いてますよ。」
「せやな。飛雄くんはほんまええマネージャーに助けられたわ。」
「……私は誰がそうであれ今日みたいな対応したと思いますよ。もちろん、宮さんだって困っていたら力になります。」
「そりゃ期待しときますわ〜。」

宮さんはそれだけ言うと手を振り他選手と体育館へと向かっていった。宮さんのあのニヤついた顔、どうにかならないかな。
私は走って2軍チームのマネージャーさんと打ち合わせをするためにスタッフルームへ向かう途中、ウオオオオという雄叫びを叫びながらこちらへとくる障害物にぶつかりそうになるのを間一髪で避けるとキキーッと急ストップでその障害物は止まった。オレンジの、少しサイズ感は小さいそれはまるで太陽のような男の子。

「すみませんっ!ぶつかりましたか!?」
「あ、いえ!ギリギリセーフでした!」
「よかった〜!俺今前しか見てなくて、すみません!!」
「いえいえ、高校生ですかね?今日は見学?」
「……へ?」
「きっと沢山いい試合見れると思いますよ、」
「俺は!選手だ!!」

あらまびっくり。恐らく身長は170cm少し、オレンジの髪が余計に幼さく見える。今も少し怒っている表情が何だか威厳もなくとてもかわいらしく見えてしまう。

「俺は日向翔陽!今は全日本チームの2軍だけど、絶対にワールドカップまでには1軍になってる男だ!」
「日向…もしかして出身は宮城の烏野高校ですか?」
「ぬぬ!?そうだけど…お姉さん俺のこと知ってるの?」
「あ、私は辻川みのりと申します、1軍のマネージャーを務めています。」
「い、いちぐん!?」
「昨日ちょうど影山さんから日向さんの話を聞いたところだったんですよ、なるほどあなたが…!」
「影山いるのか!?さっき顔合わせのときいなかったから今日は出ないのかと思ってたのに!」
「いますよ、もうすぐアップで顔出すと思います。」
「シャアアア!尚更負けられねえ!」

日向さんと影山さんは高校のころ良い相棒だったと聞く。確かに、影山さんとは真逆のようで同じ方向を向いている彼らの相性はぴったりかもしれない。すると奥からしょ〜よ〜!と叫ぶ声が聞こえた。

「おおおおお西谷さん!!ちーっす!!」
「久しぶりだなあ!あれ、みのりもいたのか!」
「そっかお2人は同じ高校、ですよね?」
「ああ、俺が先輩だ!」
「西谷さん!!今日は俺、いっぱい決めるんで覚悟してくださいね!」
「おう、望むところだ!」
「やったー!ぜってー負けねー!」

2人のやり取りはまるで少年のようで純粋だった。こういう選手がきっと応援される選手なんだろうなあとほのぼの見ているのも束の間、私はこんなところで油を売ってる場合じゃないことに気が付く。

「では!私はこれで!お2人ももうすぐ全体アップ始まると思うので遅れちゃだめですよ!」
「おう!みのり、影山のことありがとな!」
「いえいえ、じゃあまた後で!」
「西谷さん、影山のことって?」
「ああ、あいつ遅刻してきたんだよ!でもみのりが鬼の血相で間に合わすからスタメンでいかせろって周りに何も言わせないマシンガントークで凌いでくれたからよ!すげえ感謝してんだ!」
「へえ、いいひとだ!」
「おう!」

そんな2人の会話を聞くこともなく、私はまた走った。今日は走ってばっかりだ。



next.試合終了