記憶のない時のはなし(百サイド)
「ていうかぁ〜ゆきさんがぁ〜わたしのことなんて構わないといいとおもうんですぅ!」
「ああ、そうだよね。」
「ですよね!?あ、ゆきさんっていうのはぁ、わたしのたんとうしてるあいどる、なんですけろぉ、」
「わかるよ、Re:valeでしょ?いいアイドルだよね。」
「そうなんれすよぉ!ねえ、ももさ、…ももさん!ももさんはほんと〜〜にやさしくて、やさしくて、やさしくてすきれす、」
「あーもうみのりちゃん、舌回ってないよ。」
あの後、少し警戒していながらも万さんにいいように飲まされてたった3杯目にはでろんでろんに酔っぱらってしまったみのりちゃんはこれまで見たことが無いような顔と言動を発していた。恐るべし、万さん………。
「ももさん!」
「は、はい!」
「わたしはね、わたしは、りば〜れのことがきらいなんじゃないの、」
「へ?」
「りば〜れがすごいってことは、このはんとしかんでよ〜〜くわかった!だって、わたしは、すこしだって、かんじょうが、かおにでちゃうのに、ひっく、おふたりは、なんじかんとしゅざいをうけても、ひっく、えがおたやさず、しゅごい、」
「あ、あーそう?でもそれが俺たちの仕事だから。」
「しゅごい!ほんとうに、わたしなんて、すぐに、かおにでちゃって、あいそわらいもへたで、ばれちゃうし、」
「あ、はは……」
「下手なんだ?」
「かなり。」
「だからゆきさんだって、してきしてくる、ぅ〜〜、」
泣き出しそうなみのりちゃんを万さんがよしよしと頭を撫でてあげると今度は先ほどのように逃げることなくとろんとした顔で万さんの顔を覗き込んでいる。その時の万さんの表情はさすがに動揺していた。
「わたし、だめかも、」
「ん?何が?」
「まねじゃ、むいてない、」
「そんなことないよ、ねえ百くん?」
「うんうん!俺はみのりちゃんに助けられてるよ!」
「っ…ぅ〜〜でも、ゆきさんは、いやだ〜〜、」
「千のこと、何で嫌いなの?」
「ゆきさんは、わたしに、なにもしてないのに、わたしがかってに、きらいで、」
「どうして?」
「もとかれが、すきなひとだから、」
「……ん?」
「もとかれが、あいしてたひとだからぁ!」
えっと、つまり?と俺に目線を送ってくる万さんは完全に困惑しているようだった。まあそれもそうだよな、と思いつつみのりちゃんに水を渡して体制を整える。
「つまりみのりちゃんの元カレはゲイでユキさんのことが好きだったんですよ。」
「……はあ〜なるほど。」
「多分万さんも知ってますよ。佐藤聡です。」
「あーあいつ!あいつはだめだ!」
「だめじゃないのぉ!わたしはすきだったんだからぁ!」
「ああ…そうだよね、ごめんね、」
「りばれとであう、まえは、ふつうのひとだったの、」
またぐずついた表情でちびちびとお水を飲むみのりちゃんはまるで行き場を失った子犬のようで、万さんが頭を撫でたくなる理由がわかる気がした。
「だから、わたしは、さいしょりばーれがすきじゃなくて、でもいまは、すきれす、」
「それはよかった。」
「でもゆきさんは、みすかされてるみたいで、やっぱりきらいれす、」
「……まあズバズバ本音で当たってくる子だからねえ。」
「きらい、きらいだけど、……きらい、なんだけど、このままじゃだめだって、わかってます、」
「…みのりちゃん………。」
「しごと、たのしくて、おかざきさんもやさしくて、ももさんもやさしくて、すきだから…りばーれも…すき、だあら……ゆきさ、も…………、」
「みのりちゃん!?」
「落ちたね。」
「はあ…いいところで………。」
「まあ、マイナスだけじゃないって分かっただけいいんじゃない?」
「…ですね。ありがとうございます、万さん。」
「いいえ、じゃあ出ようか。」
「はい!あ、みのりちゃんどうしよう……。」
「……どうしようねえ。」