男子高校生みたいな千(万サイド)

「千、相当好きでしょ。彼女のこと。」
「うるさいよ。」

先ほどまで顔を赤くさせて照れていた人間だとは思えないほど冷たい目で俺を見るけど千のことを知る限りこれほどまでに人に執着するところを初めて見た。思わず隠せないほど笑みを浮かべているとソファにあるクッションを投げられた。

「はあ、気に入らない。そもそも何で僕らのマネージャーなのに万が一緒に飲んでるの。」
「そりゃ百くんが呼んでくれたから行かないわけにはいかないだろう?」
「…はあ、」
「どこがいいんだよ、彼女の。」

千が座るソファの隣に座り肩を回すと嫌そうに腕を叩かれる。そうはされてももうこの手の話に友人として興味津々のため見逃すわけにはいかない。

「まあ、まず可愛いよね。小鳥遊さんとは違ってまあ超平凡だけどなんかこう…人に好かれる才能みたいのがあるのかな?一言二言話すとああ、この子は可愛いなと思ってしまうよ。あと百くんが真面目だ真面目だって言ってたから、そういうところもポイント高いよね。」
「…そうね。くそ真面目なところは気に入ってるよ。」
「へえ?じゃあ他には?」
「……初めて、だったんだ。」
「何が?」
「僕のこと、嫌いだっていう女。だから何となく…ちょっと気になって、嫌いだって言われたら構いたくなるから構ってたらなんかこう…動物的な愛おしさ感じちゃって。」
「あ〜、百くんが忠犬だとしたらみのりちゃんは扱いずらい猫ちゃんみたいな?」
「そんな感じ。ねえ、万から見て恋してるって分かる?」

恋してるの、僕。と声を漏らす目の前のトップアイドルRe:valeの千はその仮面が完全に剥がれただの等身大の26歳男、折笠千斗だった。俺は千、と声をかけると熱を帯びたその瞳に一瞬ドキ?いやヒヤっとした。

「みのりちゃんが他のやつに取られたら嫌だろ?」
「気に食わないね。」
「嫌われたら?」
「傷つくよ。今だって、まだ僕のこと嫌いだと思うし。」
「もう嫌いではないと思うよ。反省してるみたいだし、これからきっと笑顔もどんどん見せてくれると思う。」
「…そうね。」
「にやけてる。」
「うるさいよ。」

まるで男子高校生のような恋心に千以上に俺は胸が高鳴ってる気がする。きっとデビューからここまで、いやRe:valeとして結束してからちゃんとした恋愛をしていないであろう千のこんな姿を見せてくれたみのりちゃんに感謝したいくらいに千は俺から見ても迷える恋愛初心者すぎて笑みがこぼれる。

「恋してるよ、千。俺はお前を応援してる。」
「……うん。」
「とか言って好きになっちゃったらごめんね。」
「それはダメ。」
「あはは、冗談だよ。」
「あの…お風呂、ありがとうございました…!」

そういって出てきたみのりちゃんは俺のだぼだぼのTシャツにハーフパンツを着て濡れた髪から雫が垂れないようにタオルを当てながら出てきた。その姿を見た千と言ったら、もう言うまでもない。

「万…、」
「ん?なに、勃ったとか言うなよ?」
「ふざけんな、超ムカつく。万の服、着せてるの超ムカつく。」
「……あはは、可愛いなあ千は。」
「バカにするな!」
「え、え、ちょっとあの…何喧嘩して、」
「いいからみのりは髪乾かしなよ、風邪ひくから。」
「は、はい!」
「万、僕もお風呂入るからね。」
「はいはい。ごゆっくり〜。」

きっと洗面所も彼女の残り香でドギマギしてるに違いない千を想像するだけでまたこのにやけは止まらなくなった。