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あれから少しだけiDOLISH7について調べた。どうやら7人からなるアイドルグループでその中でもりっくんはセンターポジション。なんか凄い賞とかも取ったことがあるらしく、そういえば見たことのある映画に出てる人とかもいた。どうして今まで知らなかったのかと思うほどにTVガイド欄には彼らの名前で溢れかえっていた。
でも知れば知るほどりっくんがどんどん知らない人になってしまったことを痛感して、小さい頃の私が知ってるりっくんが居なくなってしまった気がした。もうこれ以上はやめよう、そう思って調べた履歴を全て消した。






「辻川さん、今日みんなで食事会予定してるんだけどどうかな?」
「‥……すみません、私予定あるので。」
「そ、そっか!そうだよね、おつかれさま!」
「はい、お疲れ様です。」
「ほらやっぱりね〜?聞くだけ無駄だって!」
「でも同世代だし一応さあ…てか声大きいよ、聞こえちゃうでしょ。」
「いこいこ〜!イタリアン楽しみだね〜!」

彼女たちが去った後の更衣室はいつもよりシンと感じた。私はいつも通り、帰る準備をする。別に寂しくない、悲しくない、……苦しくない。小さいころからそうだった、慣れてる。そうやって自分自身に言い聞かせるしかなかった。下唇を噛みしめながら来ていた制服を脱ぐとパシャという携帯のシャッター音が聞こえた気がした。

「……?」

辺りを見回すけど特にそこには誰もいないから自分の聞き間違えかと思い気に止めることなく着替えを続けた。自分にアレルギーがあるということをもっと素直に伝えられたら少しは変われるのだろうか、でもそれを認めてもらうほど人付き合いを自分が求めているのか…それもよくわからない。確かにあるのは虚しさと、孤独感。

「あ、お疲れ様です。」
「ああ、お疲れ。」

私はすれ違った工場長に挨拶をして職場を出た。










いつものように家に帰る、そのつもりだった。だけど感じる違和感、それは私の後ろをつける足音。今日は雨だからバスと徒歩で出勤をしていた。いつからだろう、怖くて後ろを振り向けない。

「(どうしよう、このまま家に向かっていいの……?)」

初めてのことで完全にプチパニックがちになった私は急いで近くのコンビニに入った。どうしよう、どうしよう…とりあえず連絡を、と言っても私にいる知り合いはアカネ先生しかいない。先生は忙しいし家庭もあるし迷惑になるに決まってる……でも、それでも今このまま帰ったら確実にダメな気がする。じゃあ警察……?まだ実害もないのに相手にしてくれない、ストーカー事件って何かが起こってからじゃないと警察は動かないって何かの記事で見たことがあった。

「(こわい、どうしよう、せんせいっ……)」

私は震える身体を自分自身で身を寄せることしか出来ず両手をギュッと口元で握りしめた。いつまでもここにいるわけにはいかない、分かっていても足も震えて一歩が出せない。こんなことなら彼女たちの食事会に無理やりでも行けばよかった。俯き視界が涙でぐしゃりと歪んだその時。

「どうかしましたか…?」

心地よい声色。優しくて安心する様な…私はゆっくりと顔を上げるとそこには見間違えるはずがない、大きな瞳に赤みがかった髪。

「っ、え……みのり……?」
「……り、っくん…?」

テレビで見ていたりっくん…七瀬陸がそこにいた。