完
あの出来事から3ヶ月。
「おーいりくー!みのりちゃん来てるぞー!」
「え!?嘘まだ約束まで30分もあるのに!」
「じゃあ私三月さんと話してるからゆっくりしてて。三月さん、お時間大丈夫です?」
「もちろん!あ、そうだみのりちゃんが食べられそうな食材で新作作ろうと思ってるんだけど使っていい調味料とか教えてほしい!」
「え…嬉しい。私三月さんのこと本当に好きです。」
「ちょ!みのり!浮気だよそれ!」
「あはは!お兄さんがみのりちゃんのことを幸せにしてあげよう。」
「嬉しいです。」
「みのり〜〜!もう!あと5分だから待ってて!」
「うん。じゃあ三月さん、いいですか?」
「おう、お願いします!」
私はりっくんに会うのにマネージャーの万理さんと小鳥遊さんから了承を得てiDOLISH7の寮に何度かお邪魔することになっていた。そうすると自然と寮にいる他の人と会うようになり、りっくんとの関係を伝えるとみんなが優しく迎え入れてくれた。なので今ではりっくんがいなくても寮に行って皆さんとお喋りしながらりっくんの帰りを待ったり、皆での打ち上げに呼んでくれたり…私に新しい、初めての居場所が出来た感じがした。
「なあ、みのりちゃんと陸って正直どこまでいってんの?」
「っな、なんですかいきなり。」
「だってもう付き合って3か月だろ〜?色々しててもいいのかなあって!あ、ねえBBQソースは平気?」
「果汁が入ってないものなら平気です。べ、別に3か月だろうと1年だろうと人それぞれじゃないですか?」
「なるほど、ってことはまだ何もしてない感じ?キスは?」
三月さんはにひひ、と笑いながら聞くものだから私は恥ずかしくなって内緒ですと言って顔を反らした。りっくんとは、まだなにもしていない。私は初めての彼氏だし、それが初恋のりっくんなんだ、もうこれ以上ないほどに幸せを感じている。だからりっくんが望めば、私はりっくんに何でもしてあげたいし、そういうこともしたい…とは思っている。
けどりっくんは、もしかしたらあまりそういう欲はないのかもしれない。
「え!?男なんだからそれはないでしょ!」
「…今口に出てました?」
「ばっちり。」
「っはあ…、忘れてください。」
「顔真っ赤にさせてかーわいいねえ、みのりちゃん。」
「っ三月さん、二階堂さんみたい。」
「あ、ひでえ!」
私は耳まで真っ赤になってしまった顔を覆い、三月さんに背を向ける。こっち向いてよ〜と声を掛けられるけど聞こえないふりだ。
「じゃあ真っ赤な顔したみのりちゃんに1つだけ年上の男としてアドバイスしてあげよう。」
「……何ですか。」
「男はいつだって好きな女の子とはいちゃいちゃしたいって思ってるよ。手だって握りたいし、キスだってしたい。もちろん許されるならその先も…ってね!タイミングを見てるんだよ、ずっと。」
「……それは三月さんだけじゃなくて?」
「俺だけじゃない。そうだな、多分一織だってそうだよ。」
「一織さんは絶対ちがうよ。」
「え〜でも一織だって根本的には男子だから、みのりちゃんが思ってるよりちゃんとそういう欲はあるよ、きっと。」
「……本当?」
「本当。だから陸だって言わないだけできっと思ってる。しかもあいつ、みのりちゃんのことだーいすきだからさ、特に大切すぎると手出せないもんなんだよ、男って。」
「…………」
「だからさ、陸のことも頼むな。」
「……はい。」
三月さんが私の頭を撫でようとしたとき、私はぐいっと身体を引かれて思わず後ろに仰け反る。ふわっと香るのはりっくんの太陽のような香りで、ドッドッと音を立てる胸の鼓動がどことなく心地よい。
「三月、ダメ。みのりはオレの。」
「…ふは、分かってるよ!」
「り、りっくん、」
「顔真っ赤じゃん、ねえみのり。何話してたの?」
向きを変えられ真正面にりっくんの顔がある状態で頬を手で包み込まれる。その状況にも恥ずかしくなって私はなんでもないっ、と声を放つ。次第にりっくんの表情は気難しい表情となって私の頬を軽くつねった。
「俺以外の男の人の前で顔赤くした罰。」
「いひゃいよ、ひっきゅん、」
「もうしないって約束して。」
「う、もうしない、」
「うん。じゃあとりあえず部屋行こ。」
りっくんはそのまま手を握ってじゃあ行くね、と言って三月さんに声を掛けた。私もまた今度、と言って会釈すると三月さんはごゆっくり〜とニコニコしながら私たちを見送った。パタン、扉が閉じるとりっくんが後ろからギュッと抱きしめた。
「な、なに?」
「…嫉妬した、三月に。」
「し、しっと……」
「みのり可愛いんだもん、俺心配だよ。」
そんなの、りっくんだって。言うつもりなかったのにふと口から洩れてしまった一言に私は思わず口を押える。それってどういう意味?―――りっくんがぐるっと私の正面に回り真っすぐな目で見つめてくる。私はその視線に耐え切れずそのまま手で顔を覆った。
「ちがう、聞かなかったことにして。」
「やだ。聞いちゃったもん。」
「う……」
「もしかしてみのりも嫉妬してた…?」
「っ……してた。してたよ、だってりっくん日本中の女の子に大人気じゃん。りっくんのこと好きな人なんてたくさんいるのに私…みんなのりっくんが嫌って思っちゃって、みんなよりりっくんのこと独り占めしてるくせに…ほんと自信ない、」
「可愛いっ!」
「ひゃ、ちょ、りっくん、」
「もう可愛すぎるよみのり!!」
ぐいぐいと今度は真正面から抱きしめられると身長差的にりっくんの胸元辺りに顔が沈む。りっくんの温かさや匂い、いっぱいになってドキドキが高鳴る。
「俺が好きなのはみのり、みのりが好きなのはオレ!」
「……うん。」
「それでみのりはずっと俺の大切なたからものだよ!」
「……うん、」
もう私は1人じゃない、そう思いながらそっと彼の背中に腕を回した。
たからものはここにあった。