稼ぎ頭の宣伝広告


ツアー後、暑い、熱い夏が終わる中、今私たちは事務所にて険悪な雰囲気が漂った。目の前には岡崎さん、そして社長。横には千さんと少し離れたところに百さんがいる。

「もう一度、いいかい?」
「僕とみのりの関係を認めてほしい」
「………………」
「というと、本当に2人はそういう関係になってしまったのですか……」
「まだキスしかしてないよ」
「ッ千さんそういう話じゃないです!!」

千さん以外顔を手で覆いハァ、と息を吐く。そりゃそうだ、きっと恋愛感情を向けない人材を雇ったのに結局こうなってしまってただでさえ頭を悩ませてるのにその上ユキさんがこの状態。きっとお2人も困ってるに違いない。

「いいか、千。今やうちの会社にとってRe:valeは稼ぎ頭の宣伝広告だ。それにアイドルの恋愛はダメージが大きい。今回の辻川くんの採用だってそういうのが防げそうな人選びをしたつもりだった。だから、」
「確かに僕はアイドルだ。ファンの方に夢や希望を与える、それが役目だと思ってる。でもそれは舞台上だけで舞台を降りたらただの1人の男だ。だから好きな人と一緒になることは決して悪いことではないでしょう?」
「悪いことではない。でも君はもう普通ではないんだ、だからやるべきではない。」
「………僕はみのりが好きだ。その思いも殺せと言うの?」

冷ややかな空気は一瞬にして沈黙を流す。私も岡崎さんも何も言葉が出ないどころか、岡崎さんはぐっと堪えるような苦しげな表情を見せる。
私だって本当は言いたい。そんな予兆無かったのに好きになってしまってしまったこと、我が儘だけどこれからも彼を支えていきたいと思っていること。
だけど私は会社に雇われる会社員。普通であれば申し訳ございませんと謝り引くのが常識。言いたいことの発言の権限はこの平社員には無い。

「辻川はどう思ってるんだ」

それなのに、こういう聞き方はずるい。
私は右手を握り締めカラカラになった喉を潤すように唾を飲み込んだ。