トップアイドルみを感じる
「全くもう!黙っておけばよかったのに!!なんで社長に言うんですかもう!!」
社長が居なくなった後の事務所に響いた声は岡崎さんの声だった。先程までの緊迫とした空気は消えいつも通りのゆるい空気が流れる。
「だって結局バレるでしょ?」
「2人が言わない限りバレないですよきっと!!んもう心臓止まるかと思いましたよ…あれ、辻川さん!?生きてる!?」
「………生きてるようですが生きてる心地はしないです」
「みのりちゃん!?あんだけさっきかっこよかったのに!?嘘でしょ!?」
「でもこれで正々堂々付き合えるしラッキーじゃない。ねえみのり?」
「正々堂々は付き合えませんよ馬鹿ですか…」
「あ、ひどいモモ聞いた?今みのりが俺のこと馬鹿って言った。彼氏に向かって馬鹿って。」
「彼氏に悪口くらい言いますよ!!ねえ百さん!?」
「あーもう2人して俺のこと板挟みにすんのやめて!」
「僕の話は聞いてましたか!?」
ワイワイガヤガヤ。
日常が戻ったかのような時間。でも確かに私はこの会社の1番偉い人と直属の上司、そして一緒にアイドルをやってる相方に今日付き合ってる人とのことを認めてもらった。そのことが嬉しくて、誇らしくて。安堵からか頬に冷たいものが触れ、それが涙だというのに直ぐには気がつかなかった。
「みのり……?どうしたの?」
「えっ辻川さん……?あの、僕何か気に触ること言っちゃいました…?2人のことはこう言っても応援してますし、僕も認めてるので……」
「違くてッ……あの、なんか…なんか、嬉しくて。すみません、こんな泣くなんて自分でも思ってなかったんですけど、」
「こら、そこで拭かない。ほら、これ。」
「……、ありがとうございます。」
私は千さんからティッシュを受け取り頬に伝った涙を拭く。頭の上にポンと手を置いたのは千さんで、そのままゆっくりと頭を撫でられる。
「これからもっと嬉しいこと増えるんだから、その度泣いてたらもたないよ?」
「っ……う、」
「う?」
「……トップアイドルみを感じて胸が痛かったです」
「なにそれ?」
顔を上げると呆れ顔の千さんの後ろに何故かニヤニヤしてる2人がいて今の状況を岡崎さんと百さんに見られてることに羞恥を感じわたしは千さんと距離を取る。認めてもらえて嬉しいけどやりづらさ半端じゃない。
「と、とにかくッ!私はこの仕事、気に入ってるんです!だから何よりも仕事第一!それは変わりません!」
「えーデートは?」
「しません!!リスク回避!!」
「じゃあずっとお家デートかぁ…えっちだなぁ」
「っっ!?!ハァ!?!?」
「ちょ、出来ればユキくんと辻川さんのそういう話は……」
「しませんッ!!しませんしやらないですし!!だから私が言いたいのは…2人はこれまで通りで、ぜひお願いします。」
「……うん、分かった!」
「了解です。信じてますからね。」
「ありがとうございますっ!……千さんは、後でお話しがあります。」
「……ん、わかった。」
ありがとうございます、と言って私は一度その場を立ち去り化粧室へと身を隠した。まだ頭には千さんの手の温もりが残っていた。