人生の分岐点
忘れもしない、高校1年の夏。
当時クラスメイトで応援団長だった浜田くんが「頼む!女子の黄色い歓声必要だから!」と言われて初めて見た球場での野球。雨が降り始めた頃、そろそろ帰ろうかなとすら思っていたのに気が付けばびしょ濡れになりながら手に汗握る展開にいつの間にか目の前の試合に夢中になっていた。サイレン音が鳴り響く球場、前回優勝校と戦った西浦ナインはまるで映画みたいな展開で劇的勝利。ずっと鳥肌が止まらなくて、キャーキャー飛び跳ねる友人の声も遠くなるほど私はただただグラウンドを見つめた。
「応援、ありがとうございました!!」
客席に挨拶に来た野球部の中には勿論クラスメイトもいる。ピッチャーの三橋くん、ポジションはイマイチ覚えていないけど沢山打って塁に出た泉くん、田島くん。純粋にすごい、感動をありがとうという気持ちで拍手を送った。
どうにも夢のような気持ちでいっぱいで、友人に帰ろっか!と言われてもまだ球場にいたくて先に帰ってて!と伝え私は30分ほどその場で呆けていた。
夏だというのに少し身震いがして雨に濡れて体が冷えたんだということに気が付き客席を出てお手洗いを探している時だった。
「っ、く、ぅ、ぅ〜〜ぅ、っ、」
思わず隠れた。
一瞬見えたその姿は先程まで敵チームでマウンドに立っていた桐青のピッチャーの人だった。
壁に寄りかかるようにして座り込んで泣いてる。周りには誰もいない、きっとチームメイトから距離を取ってここにいるんだろう。ーー1人で、泣いているんだろう。
その瞬間、どうしようも無く胸が焦がれた。
この人は立派だった。ううん、あのマウンドにいた人たちみんな、すごかった。西浦も桐青も、ピッチャーもキャッチャーも他のポジションの人も。その中でもやっぱりピッチャーは勝敗に大きく関わりのあるポジション、きっとプレッシャーも半端じゃない。全て背負ってマウンドに立っているんだ。
だけど、桐青は負けた。
前回優勝校の、桐青が、負けたのだ。
目の前で泣いているこの人がどれ程までの責任を感じ、苦しみ、悲しんでいるのか。スポーツなんて真面目に一度もしたことのない私ですらその立場になることを考えただけでも涙が流れた。
「あ、あの!」
「っ……、誰」
「私、あの、……あの、今日初めて野球見て、本当に感動しました!あなたのプレーが、多分私の人生を変えてくれるような、感じがしました!結果は残念でしたが、私はあなたをずっと応援していきます!今日はありがとうございました!」
嫌味に聞こえたかもしれない。更にこの人を傷付けてしまったかもしれない。顔を上げない、目も合わない彼の感情は私には分からなかったけどどうしても野球から離れてほしくなくて、必死の思いを告げた私は走ってその場を去った。
それから3年、明くる日も明くる日も桐青の高瀬選手だけでなく彼が大学進学後も試合を見に行って完全にファンとして陰ながら応援をしていた私はついに、高瀬選手と同じ大学に入学したのであった。