突然の遭遇
その瞬間は突然やってきた。
2限が終わって3限への移動教室時だった。私はいつも通り華と教室に向かう途中。
「あ、高瀬先輩だ」
「!?」
「高瀬先輩!」
通り過ぎようとしていた高瀬選手を一瞬でも見れてしまったことだけでもまるで嘘みたいな出来事だったのに。というか私服の高瀬選手初めて見たし、うっ……やばい。華が高瀬選手の名前を呼んだことで高瀬選手がこちらを向いた。
目が、合ってしまったような気がした瞬間、私は後退りをしてその場から逃げた。無理だ、あんなに眩しい人視界に入れること出来ない。せめて球場のフェンスがないと死ぬ。
走っている私をいろんな人が振り向いて注目してくるのが分かる、だけどその視線すら気にする余裕もなくてただただ私は走った。
「もう!みのり何で逃げたのさ!」
「……ごめん」
「せっかく高瀬先輩に紹介してあげようと思っ」
「いい!そういうの、本当いい、から」
「……もしかしてもう振られてたりする?」
「そうじゃない、けど……本当高瀬選手と話したいとかそういうのじゃないの。私は高瀬選手の野球をしてる姿が見れればそれでいい、から」
「……わかった、余計なことしてごめんね!」
「ううん、ありがとう」
「でもさっき高瀬先輩びっくりしてたよ、俺にお化けでもついてる?って」
「あ、はは…」
どうか高瀬選手の記憶から早く抹消できますようにと願いながら3限の授業を受けた。だけど自分の願いとは裏腹に高瀬選手との再会は案外そう遠くない未来の話だったのはこの時の私はまだ知らない。
華 side.
「ちょ、みのり!?」
「……俺なんか憑いてた?」
「え!?いやどうですかね……私見えないですし」
「つか田崎うちだったんだな」
「あ、はい、たまたまですよ?」
「はは、どうだか」
「いやいや高瀬先輩だって私が島崎先輩ガチ勢だったって知ってるでしょ」
「あー慎吾さんこの間めちゃくちゃ美人の彼女俺に紹介してきたけどね」
「あああまたそういう意地悪を!私の青春の人でいさせてくださいよ!」
「はは、つーかさっきガンダッシュきめた子友達じゃねえの?」
「あ、そうだもう……、さっきの子、高瀬先輩のファンなんですよ」
「まじで。顔一瞬しか見えなかったけど後ろ姿的に可愛いっぽいし紹介してよ」
「いやぁ…それはどうですかね」
「は?なんで?」
「あの子、めずらしく高瀬先輩の顔ファンじゃないんで」
「は?」
「今まで紹介してきたバカな女とは違うってことですよ」
高瀬先輩はマウンドでピッチャーをしている時の爽やか野球少年だけの顔で出来てるわけではないことは桐青の中では有名な話だ。勿論高瀬先輩だけではない、私の大好きだった島崎先輩もそうだった。球児に騙されてはいけないのだ。
普通に女の子が好きで普通に付き合って普通に別れて。身長もあるし部活を頑張ってるし笑顔は子供みたいで少し意地悪な高瀬先輩、モテる要素しかないし別れたらそりゃ女の子が殺到するに決まってる。一方で高瀬先輩も可愛ければ基本的に断りはしなかった。でも大体の女の子は高瀬先輩と付き合った、というステータスが欲しいだけで高瀬先輩がやってる野球に興味を示す人はほとんどいない。
高瀬準太を語るのに野球は欠かせないのに。
「バカでも可愛けりゃそれでいいじゃん」
「うーわ、それだから先輩いつも続かないんですよ」
「続かなくても次はすぐ現れるし」
「1回痛い目あったほうがいいですよ」
「もうあってるよ、忘れたか?俺がビンタされた時のこと」
「あ〜ありましたね、あれは傑作でしたよね!ははは!」
「お前って本当……」
「まあ高瀬先輩のそのクズっぷり、みのりと関わったら直っちゃいそうな気もしますけどね」
「そんないい子なんだ」
「私と一緒です。ずっと野球部の高瀬先輩を見てきてるから」
「……お前がいい子じゃねえから一緒な時点でダメだろ」
そう言って片手を振りながら高瀬先輩は行ってしまった。
みのりのことは私も、そして恐らく高瀬先輩だって球場にいたあの子ですよって伝えれば分かると思う。みのりがいつから球場に足を運んで桐青を応援してくれていたのかは分からない。いずれその辺も話せたらいいなと思っているけどみのりが高瀬先輩に対する熱に確かに恋愛感情は乗っていなさそうだった。
3限終わり、みのりに高瀬先輩のことを伝えた時にそう確信した。でも私的にはやっぱり、2人が恋愛してくれたら面白いのになぁと勝手に想像してしまうんだ。