報告


【田崎の友達の辻川みのりちゃん、球場で発見したわ】

今日は5月にしては暑い夏のような日だった。
予選会の初戦だしスタンドにはほとんど人はいなくて、そんな中うちサイドの客席にポツンと1人女がいた。その姿は去年ちょうど中間の席に座っていた女子高生を思い出す。

もちろんマウンドからは何となくいるなぁ、くらいでしか分からなかったけど球場から出て見ると彼女が田崎の友人の子だということと合致した。


【まじですか】
【じゃあ次はわたしも行こっかな〜】

【いや来ないでいいわ】

【ひどい!】
【何か話したりしました?】

【何か話した】

【何話したんですか(笑)】

【野球好きなんだなって】
【あと名前なかなか教えてくれなかった】

【あはは、だって高瀬先輩と話したいわけじゃないって。ただ野球してる姿見たいんだって言ってましたよ】

【親かよ】

【親よりもっとすごいでしょ】
【普通予選会なんて行かないですって】



「本当だよなー、」


これまで付き合ってきた歴代彼女で予選会はおろか決勝戦にすら見にきてくれたやつはいない。別に見にこいなんて言わないけどさ、俺のこと好きなら来たいって思うもんだと思ってた。だけど世の中の女子は意外とドライで、それなら俺もそういう付き合いでいいかと必要な時だけ呼んでやることやってはいさよなら、そんな付き合いをこれまで何度もしてきた。
別にまあそれでよかった。野球も負ける時は負けるし、女も去る時は去る。同じことだ。

だけど辻川は夏日のあたかも女子が嫌がりそうな日差しが降り注ぐ中熱中症対策をしっかりした姿で細くて少し焼けた腕を晒してたかが予選の楽勝で勝てる初戦を見に来ていた。正直変なやつだと思った。


【野球オタクなんじゃね】

【野球オタクというか高瀬先輩オタク?】

【なんだそれ(笑)】

【みのりに変なことしたら私高瀬先輩のこと嫌いになりますからね】

【え、今好きなの俺のこと】

【うっざいですね】
【びっくりしちゃった】

【(笑)】


田崎はやたらと辻川の肩を持つ。俺との方が付き合い長いくせして理由はよく分からない。

でもこれから辻川のことも知ってみたいと思い始めているのも確かで。だって名前呼んだだけで顔真っ赤にしてんの可愛いし。いや普通に可愛いし。好きって言われたら俺全然付き合える。


まあこんなこと、田崎には言えないけど。