ファンミーティング?
まさか高瀬選手がわたしのことを覚えていてくれてるとは思わなかった。すごく驚いたけど、それと同じくらい嬉しくて。しかも頑張る糧になっていた、なんてもったいない言葉に胸が熱くなった。
高瀬選手のことが更に大好きになってしまう。
【昨日はありがとな】
2人で会ったあの日、連絡先を交換してたった一言のこのメッセージを何度も何度も見返して何度も何度も友達欄に高瀬選手がいることを確認した。これ以上ない幸せだった。
何て返信するのがいいんだろう、感謝を伝えるのにはどうしたって長文になってしまう自信がある。そうやってぐるんぐるん考えてやっと返信できたのは高瀬選手から連絡があって3日後だった。
【高瀬選手
先日は私なんかにお時間いただき本当に本当に感謝してます。ありがとうございました。胸がいっぱいでどう返信したらいいか分からず3日も経ってしまったことお許しください。
暑い中でだ練習も日々大変かと思いますがお身体にはお気をつけてくださいね】
これでも簡潔にした方だった。震える手で送信を押して(送信を押すのにも1時間掛かった)ここ数日の緊張から解放されたのも束の間、スマホは直ぐに震え通知を見ると高瀬準太の文字に頭を抱えた。高瀬選手、返信はやい。
【会社か】
【つーか高瀬選手やめろって言ったろ】
気になってうっかり既読をしてしまった。
うっ…高瀬選手、……いや高瀬さん、ツッコミ上手で泣けてきた。呆れられるわけにはいかないと大慌てで返信を打った。
【高瀬さんでした、申し訳ございませぬ】
【いや武士かよ笑】
【こし】
【あ!誤字をしてしまいました、すみません!】
【笑った、辻川いいギャグセンスもってるわ】
【高瀬さんに褒められて嬉しいです、嬉し過ぎて今なら3塁まで駆け抜けられそうです】
【そこはホームまで帰れw】
【体力が……】
【じゃあ俺がホームラン打って辻川のことはホームまで歩かせてやるか】
【ー?た!】
【やばすぎですしんでしまいましわたし】
【ww】
【今度バッセン行こうぜ〜】
「バッ!?バッセン、……ひええ、」
つまり打ってる高瀬…さんを目の前で見られるってこと…?信じられない提案に持っていたスマホを落としてしまった。そんな、そんなファンミーティングみたいなこと、こんな軽いノリで決めてしまっていいんだろうか。
するとスマホがまた震え私は恐る恐る手に取ると着信:高瀬準太との表示になり思わず唾を飲み込んだ。でも出ないわけにはいかない、尋常じゃない手の震えを駆使して着信のボタンを押した。
「は、はいっ」
『おー今平気?』
「だ、だいじょぶです」
『カタコトになってっし、てか誤字から面白過ぎんだけど』
笑い声が耳元で響いてくすぐったくなる。電話は初めてしたけど、いつもより近く感じる距離感に感じたことのないドキドキを感じる。試合の前でも試合中でも味合わない、とくんとくん、という心音。
『バッセンは興味ない?』
「あ、ります、ありまくりです、けど…そんな近距離で高瀬選手のバッティング見てもいいのでしょうか……」
『……なるほどね、それで悩んでたっつーわけ』
「だ、だってファンミーティングだったらお金払わないとですし」
『なんだそれ、お前ほんっと変なこと言い出すよなぁ』
「それから高瀬せん…高瀬さんのスイングには価値があるということで、」
『これでも俺、女の子バッセンに誘ったの初めてだったからキンチョーしてんだけど』
「………え、」
『行くの?行かねえの?』
「っ行きます!!」
『ん、じゃあ次のオフな』
「はっはい!またご連絡お待ちしてます!」
そうしてわたしは高瀬さんとバッセンにいく約束を取り付けることに成功してしまった。その日が命日かもしれない、そう思いながらまたベッドの上で大暴れした。