もう逃さない
「だぁーーーしつけえ」
「モテる男も大変だなぁ高瀬」
ここ数日、辻川に避けられるわ間藤とかいう女がしつこく俺と俺の周辺をうろちょろしてることに若干、いや相当イライラし始めていた。
「いいじゃん、可愛いし。外堀埋めてこようとするところとかある意味健気じゃね?」
「どこが健気だよ。怖いだろ普通に」
「てか高瀬ってわりと可愛けりゃ誰でも付き合ってなかった?」
「だよなぁ?」
「……うっせ、もうその頃の俺はいねえんだよ」
「お、好きな子でもいんのか」
「え、あの子以外ってことだろ?!誰誰!?」
辻川が間藤を連れてきたあの日、野球が好きで野球をもっと知りたいというからあの後連絡先を交換したのに一切野球には触れずその辺の女と同じことばかり聞いてくるやつに、あああの時の感想はきっと辻川が一緒に見てる時いろいろ伝えた内容なんだろうなと確信した。
まあ、そうだよな。あんな俺が調整の為に初回ピッチングしてたとか気付ける女よく考えれば辻川くらいなんだわ。ああ、あの時辻川がどんな顔してたか思い出せなくて、その後確かに涙を流して下手くそな笑顔で俺の前からいなくなったことしか思い出せなくて憎らしい。
「でも高瀬はあの子がいいと思うぜ、俺は」
「あーあの子な」
「あの子?」
「ほら、毎回試合見に来る子いるだろ?ああそう言えば今しつこく来てる子と来てた子だ!」
辻川のことを言ってんなこいつら。
あの子熱心に野球見に来てるよなぁ、しかも一切話しかけてこない!でもたまにあの子ベンチから見ちゃうことねえ?あーあるある!特に、
「「高瀬三振取った時!!」」
「はーーわかるわー!!」
「お前ら…!!」
「あの時のキラキラした顔、めっちゃ可愛いよなぁ」
「高瀬のファンじゃないなら全然声かけてたけどあれは生粋の高瀬ファンだよなぁ」
「わかる、つーか俺は彼女を応援したい!」
いやいや、応援したいって俺そいつに絶賛避けられてるんですが。そう言えば避けられたのは間藤を連れてきたあの日以降かもしれない。どうせあいつのことだ、間藤に気を遣ったりしてんだろう。俺の気持ちを無視して。
「んで?高瀬の好きなやつは?」
「……お前らのお望みが叶うと思うけど?」
「うっそまじで!?」
「うわー俺リアルに予選会優勝並みに嬉しい!!」
「いや気持ちはわかる!」
「早く告ってやれよ!」
「あっ噂をすればあの子じゃね?」
「なんかすげぇ走ってんな」
「わり、俺行くわ」
「おう!がんばれ!」
どこに向かって走ってんだか知らないけど今にも転びそうでどんくさい後ろ姿を俺は軽く小走りで追いかけると野球部の部室付近に到着した。
もう逃さない、俺は辻川が好きだ。