神の領域


「お前何で俺のこと避けてんの」

高瀬さんは隣に座り大学の4限の始まるチャイムと同時にそう問いた。私は両手をギュッと握りしめて恐る恐る口を開いた。


「すみません、わたし……間藤さんと高瀬さんがいい感じに、なるのかなと思って……邪魔しちゃいけないと思って、」
「ハァ?」
「勝手にすみません…」
「……ほんっと勝手だな」


怒っている。こんな高瀬さん、見るの初めてだ。やっぱり自分がしたことがいかに自分勝手なことだったか改めて思い知る。


「俺はなぁ、お前が好きなんだよ!」
「………すき?」
「何であんなわかりやすくアピールしてんのに気が付かねえんだよ鈍感」
「あ、ぴーる……」
「俺はオフの日に気のない女と遊びに行ったりしねえの」 


そう言いながら高瀬さんはわたしの頭を優しく撫でた。嘘みたいな告白、まさか高瀬さんが私のことなんかを好きだなんて夢のようだ。


「辻川は?俺のこと好き?」
「っ……すき、すきですっ」
「それちゃんと恋愛感情って認識でいい?」
「……高瀬さんが、他の女の人と付き合ったりするの、私……いやです、あと、高瀬さんのこと考えると、たくさん楽しくて、嬉しくて、ドキドキして、でも苦しくなるんです。ただファンだった時にはない、感情です」
「……ん、そっか」
「好き、です……高瀬さん、わたし」
「あーもうわかった、それ以上何も言うな」


高瀬さんは顔を手で覆いお顔を隠してしまった。頬が赤く染まっていたような気がしてわたしもつられて赤面してしまう。こんな状況で誰か来たらどうしよう、そう思ったのは私だけじゃなかったようで高瀬さんは立ち上がって私の腕を引いてあろうことか野球部の部室の前で鍵を取り出し中に移動させられた。私は神の領域に、入ってしまった。


「た、高瀬さんっ」
「わり、ちょっと」

鍵が掛けられた瞬間、真正面からギュッと抱き締められた。高瀬さんとの身長差は約20cm近くあるからかすっぽり埋もれてしまい、肩に顔を埋めるような形になる。ずっとフェンスの向こうにいた人と、ハグしてる。思わず身体が震えてしまう。


「緊張してる?」
「っ……し、てます」
「恥ずかしいくらい伝わるわ」
「ぅ、こんなところでっ」
「まだ誰も来ねえよ、多分」
「た!?わ、わたしもう出ないと、」
「んな顔した辻川、他の男に見せるわけねえだろ」
「っ〜〜たか、せさんが、」
「んーお前ちっせえな」
「ふ、ふつうです」
「はぁ〜やべ、これ以上は俺がダメだわ」


そう言えばようやく高瀬さんは私のことを離してくれゆっくり顔を上げるとすごく優しい顔をしていて視線が合わさる。この、かっこいい人が、わたしのことを…好きだって、言ってくれたんだ。


「高瀬、さん」
「ん?」
「……好き、です」
「もうわかったって、お前1回リミッター外すとそれしか言えなくなんの?」
「でもっ…好きなんです、」
「……俺も好きだから、付き合おう」


推しで、生き甲斐の高瀬選手とお付き合いすることになりました。